最近、ロックが悲しそう。
前は夏の太陽みたいだったのに、近頃は少し物憂げな顔をしている。
そんな顔をしてほしくなくて、明るい太陽みたいに笑って欲しくて、
私は彼に笑いかける。
すると彼は優しく微笑んで、それからまた、苦しさを秘めたような
瞳をする。
でも、例えばエドガーと話している時は、こんな表情はしない。
私と話す時だけ、彼はこんな顔をする。
どうして?
私、何かしちゃったのかな…。
耐えられなくて、思わず私はロックに聞いてしまった。
「どうしてロックは、私と話す時にそんな悲しそうな瞳をするの?」
「へ?」
驚いて見開かれる、グレーの瞳。
そこにいつもの悲しみはないから、それだけで私は安心してしまった。
「もしかして私、ロックに何かしちゃったの?」
本当は怖かったけど、聞いてみる。
『知らない』のは、ダメだから。
するとロックは微笑んで、
「そんな事ないよ。ティナは、何も悪くない」
そう言って、また悲しげな瞳をしようとしたから――
思わず私は両手でロックの顔を包み込んだ。
「ウソ」
私は少し、ロックを睨む。
「前に、私が知らないことは教えてくれるって約束したじゃない」
あの、高い空の下で。
「ロックが悲しいと、私も悲しいの。ロックが寂しいと、私も寂しいの。
だから、一人で悲しまないで」
そう言った瞬間、――いきなりロックに抱きしめられた。
「ロック…!?」
こんなロックを見るのは初めてで、突然のことに動揺して、
私は思わず逃げようとした。
だけど逃げようとする私を封じ込めるかのように、ロックが
さらに力を込める。
―すごい、力。
こみ上げてくる恐怖。
衝撃のあまり言葉も出なくなった私に向かって、ロックは言った。
「ティナが、欲しい」
「―え?」
よく、意味がわからない。
「ティナが、欲しい」
そう言うと、ロックは少し腕の力を緩めてまっすぐに私を見つめてきた。
見たこともないほど、真剣な眼差し。
私はまた、言葉を失う。
「ティナが欲しいんだ。好きだから。…ずっと、言いたかった」
―欲しい?
―好き?
その2つが繋がらなくて、私は混乱した。
「私もロックのこと、好きよ?でも『欲しい』っていうのはどういう――」
「そんなんじゃなくて!」
もう耐えられない、という風にロックは叫ぶと、いきなり自分の唇で
私の唇を塞いだ。
「!?」
く、苦しい…。
呼吸ができなくて、私はジタバタする。
でも、ロックは離してくれない。
―あんなに優しかったのに。
―あんなに暖かかったのに。
悲しくなってしまう。
「―!!ごめん…」
いきなり、離された。
不思議に思ってロックを見ると、苦しくなるほど切ない顔で、
私を見ている。
傷ついたような、ロックの表情。
彼はそっと私の頬にふれた。
気づかなかったけれど…
どうやら私は、泣いていたらしい。
「ごめん」
そう言う彼の瞳が悲しくて、私は突き落とされたみたいな気がした。
―私の、せい?
私が彼を、ここまで悲しくさせているのだろうか?
私が彼を、ここまで追い詰めたのだろうか?
涙が、こぼれる。
「ごめん、もうしないから」
ロックの、優しい声が聞こえた。
違うの。
そんなんじゃないの。
「違うの」
泣き声みたいな声で、私はロックに言った。
「私は、ロックを悲しませている自分が悲しいの。
―私の、せいでしょう?」
いつも笑顔をふりまくあなたを、ここまで追い詰めたのは
きっと私。
笑顔でいてもらいたいのに。
優しい顔が、大好きなのに。
「――いいよ」
「え?」
「ロックに、あげる」
それであなたが微笑むのなら。
もう悲しまないのなら。
「ロックに、私をあげる」
だから、
「お願い。もう、悲しい顔をしないで……」
<あとがき>
初めての続き物です。
実は『秋空』→『宝物』→『君への想い』と、繋がってたりします。
なんと言うか…これを読んでご不快になられた方がいたら、本っ当にすみません!
(これを投稿するのに1ヶ月間悩みました)
でもどうしても、ロクティナはサラッとくっついちゃうような二人だとは
思えないんです~っ
頑張って続きを書きますので、よろしくお願いします!!!