本当は。
怖くて、仕方なかったの。
*
どれだけ手を拭っても、もう。
染み付いた血の匂いが、取れない気がする。
操られるままに、生命を絶ち続けた自分への、それは罰。
一生取れることのない、印。
自分の手を、見詰める。
ぎゅっと握った掌を開くと、赤みが増した。
赤。
赤は、キライ。
血を思い出させて。
キライ。
「ティナ、ここにいたのか」
振り返ると、彼がいた。
何の躊躇いもなく、私に手を差し伸べた、人。
血塗られた手を、あっさりと握った人。
初めての、人の手。
ぬくもり。
「駄目だよ、こんな薄着で。風邪でもひいたらどうするんだ」
私の肩に、上着をさっとかけてくれた。
彼が今まで身に着けていたそれは、彼の温もりが染み付いて。
彼の優しさが染み付いて。
……あたたかい。
「ロック」
「ん?」
初めて。
自分から、手を伸ばした。
「あなたは、大丈夫?」
触れてみた彼の腕は、温かい。
彼は2、3度瞬きをして。
それから、笑った。
「大丈夫だよ。ありがとな」
*
あなたは、私の手を、拒まなかった。
だから。
私は、あのとき。
触れることが、怖くなくなったの。
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ご無沙汰しております。
久し振りにお邪魔したところ、素敵創作がたくさんあって、
大変ご盛況で嬉しい限りです。
そんな中に駄文を投下してしまうのは、やはり病気(汗)
ゲーム序盤のティナをイメージしております。
人との関わり方もまだ手探りの状態を、『手』に置き換えて
みたかったのですが…嗚呼力不足です。
お目汚し、失礼いたしました。