あれから一週間。
ティナとは、目どころか顔すら合わせない日々が続いている。
いや、正確には「合わせてもらえない」日々なのだが。
自ら招いた事態とはいえ、この一週間は、俺にとっては
伝えた想いが最も残酷な形で自分に跳ね返ってきた、地獄の日々だった。
「浮かない顔だな、ロック」
天気の良い、昼下がりの街中。
尽きてきた食料と日用品を買い求めるため、買出しメンバーとして
ほとんどの仲間達が街に出てきていた。
今、飛行艇に残っているのは、飛行艇を愛してやまないセッツァーと
買物嫌いなカイエン、人間じゃないモグとウーマロと、それからティナだけだ。
「うるさいな」
エドガーのニヤけた顔をうんざり眺めながら、俺は答えた。
「ティナをそばで守れない以上、危なくて街になんか連れてこられないんだ。
仕方ないだろ」
避けられてるんだから、と、心の中で言う。
「そうだよなあ。お前が『街に行く』と言えば、ティナは飛行艇に残るしかないもんなあ」
とても嬉しそうにエドガーが相槌を打った。
こいつ、絶対楽しんでる。
「でも、このままでいいのかい?」
いいわけないだろ。
「そうだよな」
声に出して答えた訳じゃないのにそう言われて、驚いてエドガーを見ると、
いつになく真剣な顔でこちらを見つめていた。
「お前が悪い」
「なんだよ、いきなり」
「いつまでも過去に縛られてる、お前が悪い」
核心を突かれて、カッとした。
「俺はレイチェルが好きだったんだ。生き返らせようとバカな事をするぐらい。
それを今更、『好きな人ができました』ですませられるか」
「忘れたくないと思うのはいいが、それのせいにして未来を閉ざすのは
ロック、お前のエゴだ」
「なっ…」
反論したいのに、言葉が出てこなかった。
「どうして自分がティナに惹かれたのかを思い出せ。お前は多分、
前に進もうとするティナに惚れたはずだ。」
そう言われて、ハッとした。
思い出したのは、秋空の下で笑うティナ。
―強くなりたいの。
そう言った彼女に、初めて芽生えた感情。
「そう…だな」
自分の手を握り締める。
「確かに俺は、そんなティナを好きだと思った」
忘れたくない過去を抱きながら、それでも俺は未来に憧れた。
「迷うなよ」
エドガーが、笑って言う。
「この私が許してやるから。お前は、未来を選べ」
ちっとも関係ないくせに堂々と言うのがおかしくて、たまらず笑ってしまった。
救われた気がする。
「サンキュー。…俺、行くよ」
そう言うと、回れ右をして飛行艇へ戻り始めた。
―ティナに会いたい。
「ロック!」
走り始めた俺に向かって、後ろからエドガーが呼びかけてきた。
何事かと振り返ると、
「上手くやれよ!」
と、聞いた事のあるエール。
その顔は、やっぱりウソ臭い、爽やかな笑顔だった。
<あとがき>
エドガー兄さん、大活躍です。ついでに『秋空』も大活躍。
『秋空』を読んでない人にも伝わるように書いたつもりですが…
伝わってなかったらスミマセン。
そっちも読んで下さいね☆(←悪徳商法)
来月からネット環境が悪くなってしまいそうなので、今月中に
このシリーズを完結させることにしました。
というわけで、もしかしたら私の小説ばっかり並んでしまうという事態に
なってしまうかもしれませんが(悪夢)、来月再来月と自粛するので
どうかどうか許して下さい~