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「冬に咲く花」 百子

何枚肌に布を重ねても寒い冬の日。
窓の外に目をやるとそこにはもう、雪以外には何も無い、ただ白いだけの世界。
ティナはそれを乾いた瞳で見つめていた。
外では未だに空から無数の雪が降り注いでいた。
雪たちはただ雪の吹き溜まりの上に積み重ねられるだけ。
そして雪がやむ頃には積み上げられた雪の塊しか残らない。
「私もこんな風に何かの中に溶けていくだけなのかしら…」

ーーーーー二時間ほど前のこと

「じゃあパーティーは私とマッシュとリルム、それにモグでいいな。」
リーダー格のエドガーが言うことを仲間たちは確認する。
「ちょっと待った。」「何だ。」
セッツァーが途中で割り込んだ。
「フェニックスの洞窟には2つのパーティーで行かなきゃいけなかったはずだぜ。」
「ああ、そうだったな…悪いがもう一つパーティーを作ってくれないか、セッツァー。」
「よーし、じゃあ第二パーティーは俺とカイエンとシャドウと…」
次々に仲間を指名していくセッツァー。
ティナは自分の名前を呼んで欲しいと思っていた。
そこに行けば会いたかった彼に会える、そんな気がしたからだ。
しかし…
「私に行かせて。」セリスが言った。
「は?」「そこに行けば彼に会える気がするから…」
「俺はティナの方がいいと思ったんだが…」
セッツァーがティナの方を見やる。
だがセリスはこのまま引き下がらなかった。
長い長い交渉の後、最後の一人はセリスになった。

ティナとセリスの思惑通り、洞窟の出口にはロックがいた。
コーリンゲンの村に行くといったロックを、知ったティナは追いかけた。
そして奇妙な老人の住む家のドアに手を伸ばしたとき・・・
ドアの隙間から見えた階段の近くには、セリス。
しばらくするとロックが現れた。
「ロック…」「セリス…」
互いの名を呼ぶ男と女の声。
ティナは耐え切れずそこから、そして村から去った。

そして飛空挺に帰ってきたが…
「いや~それにしてもセリスは凄かったなぁ。」
「全くでござる。」帰ってきたセッツァーとカイエンが会話をしている。
「そんなに強いのか…なら今度からはセリスをティナの代わりに連れて行くか。」
エドガーのその一言を聞いた瞬間、ティナは自分の部屋に駆け込んだ。
そして必死に声を押し殺して、泣いた。
「私なんていらないのね…」そう呟きながら。

ーーーーー

仲間たちが眠りについた頃。
「外に出れば私も雪の中に溶け込めるかしら…」
独り言をいうとティナはそーっと外に出た。
「…寒い。」
凍りつくような冷気が容赦なくティナに注がれる。
それでも彼女は少し進むとぺたりとしゃがみこんだ。
そしてじーっと、降って来る雪を見ていた。
雪は降りてくる。ただ吹き溜まりの一部になる為に…。
「私もこんな存在なのね…
勝手にやってきて勝手に消えていくだけの…。」
「消えていくってどういうことだい?」「えっ…?」
驚いて後ろを振り向くとそこには、ロック。
「ロック…!どうしてこんなところに…?」
「ちょっと見物でもしようかと思ってね。」
にやっ、と笑うとロックはティナの隣に座った。
「やっぱり綺麗だよな、雪は。」「ええ…。」
さっき言った独り言について何か言われたりしないかと心配していたティナは動揺しながらそう返事した。
しかしそれからロックは黙って降り注ぐ雪を見ていた。
そしてティナも…。
雪は2人にも容赦なくかかってくるが、体温で溶けていってしまう。
もうどれくらい白い世界を見たのだろう。
「さて…もうそろそろ行くか。」
長い沈黙の後ロックが言った。
「ええ。」ティナもそれについていく。
ロックは不意に、ティナの背中に目をやった。
服の下には胸元を整えるためのコルセットがされていた。
それはややゆったりめに付けられている。
そんな背中にそーっと手を伸ばすと…
「きゃんっ!もう、ロックってば…。」
うぶな女らしい返事が返ってきた。
「悪い悪い。」
彼はそういうとティナの頭に白い一輪の花を付けてやる。
「似合うな。」「え…」
微笑を浮かべて自分を見つめるロックに、ティナは目を合わせることが出来なかった。
そんな純粋な反応にロックは更に嬉しくなった。
「さ、入ろう。」
そういうとロックはティナの背中を押して飛空挺の中に入れた。

ロックと別れた後、ティナは自分の部屋で寝る準備をした。
胸元に目をやると、自分で締めたコルセット。
「これ付けたままじゃ寝られないわ…」
後ろに手を伸ばして紐を緩めると、胸元が空気に当たって解放感を感じる。
ポト…。
「あら?」後ろから何か軽そうなものが落ちる音がした。
「これは…」それは小さなメッセージカードだった。

ーーーーー寒い冬の後には必ず春が来るさーーーーー

カードに書かれたそのメッセージをティナはただ黙って見ていた。
しかししばらくするとティナは呟いた。

「ありがとう、ロック…」
彼女の頭には冬に咲いた白い花が誇らしく、けど凛と咲いていた。
(完)


(あとがき)
初めまして、そしてごめんなさい…(泣:いきなり)
何かもう…駄目ですね、色々と。
最後辺りからが何かもう…言い出したらきりがないというか。
ちなみに白い花は造花です。ロックの手作りです。
こういうことは文中に書くべきですよね~、なんであとがきに書いちゃうの自分。
飛空挺も…確かファルコンって部屋が一つしかないはずですよね。
なんでそんなところにティナのプライベートルームがあるの自分。
もう色々と矛盾しててごめんなさい…。
もしかしたらまた駄文など投稿してしまうかもしれませんが大目に見てやって下さい…。

Title
「冬に咲く花」 百子
Posted
2007/10/07
Category
ロクティナ・SS

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