世界最速の飛空挺・ファルコン号の中で私達は喜びに満ち溢れていた。
無論、ケフカによって滅ぼされかけていたこの世界を救うことが出来たからだ。
けど…私は皆がいない、機械がいっぱいある部屋の中で一人、シクシクと泣いていた。
「もう、彼と一緒にいられない…」そう呟きながら。
けど…
「ティナ~~!こんな所にいたの~?早くこっちにおいでよ~!」
リルムの元気な声。
それを拒む訳も無く、私は涙を拭いてそれについて行った。
この旅の後の宴会の後、彼女よりももっと小さな子供達の元へ母親として帰らなければならない。
決して戻りたくない、そういう訳ではない。
それなのに、ならばどうして…
「ティナ、こんな所にいたの?早くお祝いしましょう!!」
セリスの声。
「ええ。」私は頷いた。
そして、その時が来てしまった。
私の初めての”恋”が終わる瞬間が。
一人、また一人、飛空挺から離れていってしまう。
それぞれの帰るべき場所まで帰らなければいけないのだ。
ロックも、私も、そして皆も…
「さて…モブリスの村だぜ、ティナ。」
セッツァーの声。
「ありがとう。」私は低い声で言った。
「お別れだな…」ロックが言った。
愛しい人から言われたその言葉を聞いた私の心はチクリと痛んだ。
きっと彼はコーリンゲンの村に降りるんだ。
そして、自分ではない女性を恋い慕うのだろう。
けど、それでいい。
私にはまだ小さい子供たちが、いる。
自分だけ幸せになるなんて、そんな罪深いことは出来ない。
自分が幸せになること、それよりも前に他人が不幸になってはいけない。
自分のせいで誰かが傷つく、それだけは駄目だ。
傷つくのは、私でいい、私だけでいい。
「ありがとう、みんな…」
「…さようなら!元気でね!!」
最後は泣きたいのを何とかこらえ、笑顔を作った。
泣いちゃあいけない。
そんな皆を心配させるようなこと、しちゃあいけない。
「じゃあな」「さようなら」皆も返事を返してくれた。
けどこらえ切れなかった私は踵を返して村に走って戻ってしまった。
村に帰っても、私が泣けそうな場所はなさそうだ。
だってそこには、小さな子供たちがいるのだから。
そう、今から私は母親に戻るんだ。
さっきまでは世界を救うために戦ってきた、勇士達の中の一人だった。
だから母親でいる間には許されない恋だって、出来た。
けど今は違う。
私には小さい子供たちを育てるという義務が待っている。
自分勝手な思いはもう許されない。
ー忘れよう、許されていたものを。
ー忘れよう、片思いの恋を。
ー忘れよう、誰にも気づかれず持ち続けたこの思いを。
そう決心すると私は村の中に足を踏み入れた。
(あとがき)
う~ん、やはり最初は暗い文章が続いちゃいましたね…
次からもうちょっと明るくなればいいんですが。
気づいた方もいらっしゃるかも(いないいない)しれませんがこの話、「パパザウルス本編」のロックとティナの話を二人の視点で再現したものです。
さすがにパパザウルスみたいなほのぼの作品でこんなダークな話は入れられなかったので。
最近はちょっと忙しめなので更新するのは結構遅いかもしれませんがよろしくお願いします…。
ちなみに題名は「オブリヴィオン(忘却)」です。
私が好きな某フィギュアスケーターの方が今年のプログラムに取り入れている曲の名前です。