「ロック…!」私は思わず叫んでしまった。
しかし、彼の目は私の顔でなく、もっと別のところを見ていた。
これでは私が目を合わせる場所が無い。
「どうしたの?」
ただ黙っている彼にそう訊ねた。
「お前…」彼は私の胸元を見て、言った。
「年上の男の前でよくそんな色っぽい格好をしてくるなぁ。」
へ…?
不思議に思った私が胸のあるところを見てみると…
ふしだらにも、それはこれでもかという程にはだけていた。
きっと寝ていた時にそうなってしまったのだろう、もう胸の半分は露になってしまっていた。
「やあっ!」
私はまた叫ぶと懐を手で覆った。
「…あんまり言いたくないけど、そんな大声出してたら子供が起きるぞ?」
面白がっているのか、彼の顔は少々笑っている様にも見えた。
それがたまらなく嫌だった。
「ところで今、大丈夫?」
こんな時間にいきなり来ておいて大丈夫も何も無いだろう。
「…いいけど、今じゃないと本当に駄目な用件なの?」
「ああ。子供の前では絶対にいえない話だからな。」
口調は如何にも笑っているみたいだった、それに似合わず急に鋭くなった彼の目付き。
そんな彼の瞳に私はどうすればいいのか分からなかった。
「じ、じゃあ…中に、入って。」
熱い彼の視線から目を反らしながらそう言って彼を部屋に招き入れるのが精一杯だった。
その刹那だった。
彼は部屋に入るや否や私をベッドの上に押し倒した。
そして、私の体の上にのしかかった。
「やだ…何するの、ロック!」
「あんまり声を出さない方がいい、子供達に聞こえる。」
「け…けど!貴方がこんな事するから…んっ。」
私が言い終わらない間に、彼は私の唇を奪った。
口の中にまで彼の舌が入ってきたので息が満足に出来なくなり、苦しくなった。
「んんん…んーっ。」
話したいのに口を塞がれているせいで何の言葉にもならない。
すると急に、唇が自由になった。
「っはぁ、はぁ…」私は急いで呼吸を整えた。
しかしそれが終わるか終わらないか分からない時に、彼は先に口を開いた。
「ティナ…。」私の名を呼ぶ彼。
「…愛してる。」
………!!
私は何が起きたのか分からなかった。
ただ、息を止めるかのようにして彼の顔を見た。
さっきよりも鋭い目付きで、そして真面目な顔で私と向き合う、彼。
「やめて…こんなの、いつもの貴方じゃない!」
言ってしまった。思っていることをそのまま。
しかし彼の瞳はそれでも変わらなかった。
ただただ私のことを見つめている。
「お前は気づかなかったかもしれないけど、俺お前と旅をしていた頃からずっと、お前のことを愛していたんだ。」
嬉しいけど、駄目…。
私にはあの子達がいるじゃないか。
私はもう、残りの人生全てをあの子達の為に捧げるんだ。
もしここで、彼と付き合ってしまっては…
「ごめんなさい…。」
私にはもう、謝ることしか出来なかった。
「ティナ…俺が聞きたいのはそんな言葉じゃないんだ。」
彼は声のトーンを知らず知らずの内にか、低くして言った。
「お前はどうなんだ?俺のことが好きか?」
「そ…そんな。」
「それだけが聞きたいんだ。子供の事なんてどうでもいい。
お前が俺に対して思っていることだけを言ってしまえばいい。」
そんなことを聞くなんて…
「お前は俺のことが好きなのか?嫌いなのか?」
「わ…分からない。」
私は熱い視線を送ってくる彼に、そう答えるのが精一杯だった。
そういうと彼ははーっ、とため息をついて私のことを見た。
「…そうか。」
そういうと彼は私の腕を放した。
そして私をベットに残したまま立ち上がった。
「驚かせちまって悪かったな、ありがとう。」
彼はドアに手を伸ばすと片手を挙げて出て行ってしまった。
嘘ばっかり…。
私は彼が出て行った後、泣きながら枕に顔を埋めた。
大好きだったくせに…彼のことを考えていて眠れない夜があったくせに。
こんな風になってしまっては、明日の朝からどんな顔をして彼に会えばいいのだろう。
自分はなんて嘘を吐いたのだろう…
私は泣きながら、いつの間にか眠りについた。
(あとがき)
ロックがケダモノみたいになっちゃっててすいません!!
けど書いてて楽しかったです。
ティナを想う余りこんな風になっちゃうロックって、書いてるとなんかはまる…(はまるな馬鹿)
こんな調子ですが、最後はラブラブで終わるはずなので…
よろしくお願いします。