屋敷の中は、暗かった。
私とロックはただただ黙って歩いていた。
近くに誰かいるとするならば、自分達の存在に気づかれてしまうからだ。
ー私のせいで子供達は捕らえられてしまったのだ。
もっと私が母親としてしっかりとしていれば…
ー忘れよう、子供達が帰ってきたら。
「侵入者かい?」
いきなり聞こえる、男の声。
「誰だ?!」
「…お前さんたちもここに来てたのか…」
「…へ?」
「貴方…まさか…?」
そう、この人、敵じゃない。
いいや、むしろ久しく聞くこの声の主は…。
「…セッツァー!?」
「よう、久しぶり。お前らもジルを生け捕りに来たのかい?」
「そんな訳ないだろう。村の子供達が全員攫われちまったんだ!」
そう、私達の目的はあくまで子供達を連れて帰ること。
ジルのことについては二の次、三の次だ。
「俺はジルの野郎を生け捕りにするためにここに来た。
お前も気づいているかもしれないが、この館の主がジルだ。
ま、普段はジャニー・デ・シェリル公爵様らしいがな。」
「よく知ってるな…。」
「まぁここに住んで長いからな。
ジャニーの野郎は自分の立場を利用して訪問客誰一人入れようとしない。
となれば中で何かこそこそとやってるんじゃねえかってね。」
さすがはシドール人、こういうことには詳しい。
「とにかく仲間が増えれば心強い。先を急ごう!」
私達3人は先を急いだ。
見回りの兵士達の目を潜り抜け、大きな扉を開けると、部屋が4室しかなかった。
どうやらここにジルとその妻の間が在るらしい。
公爵の間が在るのに見張りの兵一人もいないのはおかしい。
「まずはここにいる公爵がジルさんじゃないか否かを確かめるとするか。」
そういうとセッツァーは一番右側にある部屋のドアを勢いよく開けた。
するとどうしたことだろう。
彼はすぐにそれを閉じてしまった。
「どうしたんだよ、セッツァー!」
「…お前らは見ないほうがいい、絶対に!」
そういうとゲホゲホと気分悪そうにしゃがみ込んだ。
「まさか…」「…ああ。ガキ共の…」
それを聞いた瞬間、私は二人を押しのけて中に入った。
聞こえてくる声も聞かずに…
中にあるのは、無数の子供達の惨殺された後の姿。
私はその中に自分の愛しい子供達がいないか調べた。
しかし、遺体の状態がどれも酷いものだったので亡骸が自分の息子娘のものかなど分からなかった。
中にはもう人間の面影さえ残さぬ程にされたものもあった。
私はよろよろと部屋を出、しゃがみ込むと泣いた。
自分が情けなかった。
あれ程見慣れた子供達が生きているか、死んでいるかさえ分からないなんて…
「ティナ…。」ロックが優しく私の肩を抱いてくれた。
「大丈夫…あいつらは生きてるから、きっと…。」
肩から伝わる、彼の温もり。
それを感じると自然に不安が和らいだ。
「おーい!!こっち来い!!」セッツァーの声。
「生きたガキ共がいやがるぞ!」「何?!」「本当?!」
私は物凄い速さでそこに駆けつけた。
後ろでロックが私のことをただ呆然と見ている姿がチラリと見えた。
「母さん!」「会いたかったよ!!」
「みんな…ごめんね、…ごめんね。
私がもっとしっかりしていれば…」
私は泣きじゃくって閉じ込められていたわが子と再会した。
やっぱり子供達は、可愛くて愛しい。
私は人間であると共に一人の母親なのだという思いが胸をよぎった。
「…さーて。では早速ジルさんの元に行くとしますか。」
「ああ、あいつの証拠はこの目でしっかりと見た。
後は連れて帰って警察にでも届けるまでだ。」
そういうとロックとセッツァーは部屋を出て公爵の間に向かった。
「待って!二人だけでは不安だわ!!」
「安心しろって…俺ら二人がいればジルの一人や二人、どうって事ないさ。」
「…気をつけて。健闘を祈るわ。」
二人は片手を上げて隣にある公爵の間の扉を開けた。
(あとがき)
う~ん…未だにジルが登場していないというのは…
展開が遅くてごめんなさい…
しかもバトルシーン入ってないし…
いろいろと矛盾していてごめんなさい…。
あと2話で終わる…と思われます。