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「オブリヴィオン」 8.5

「初めまして、ジルさんよぉ…。」
セッツァーはドアの向こうにいた公爵と思われる男に無礼に挨拶した。
「き…貴様ら。どうやってここに…!」
「だーれも気づかなそうなところからちょこちょこっとね。」
「お前が悪党ジルだって事は既にお見通しだ。
大人しく俺らについて来い、そうしたら無傷で警察のところまで連れて行ってやる。」
公爵は未だにそのことが信じられないようだった。
しかししばらく沈黙すると腰元から剣を取り出した。
「…お前らが私に勝てたらなぁ…考えてやる。」
「フン…二人の男に戦いを挑んでくるとは…ずいぶんと勇ましいじゃねーか。」
「ハハ…そんな訳無いだろう。1対1の戦いだ…。」
どういうことだ?2人が顔を見合わせた瞬間、ロックの体に激痛が走った。
「…いってぇ…!」
セッツァーが後ろを振り向くと、そこには黒い髪の美しい女がいた。
手には薔薇の茎の様に棘のある鞭を持っていた。
「ジル…この大泥棒のロックは私に任せて。」
「悪いな…エリザベーラ。」
どうやらこの二人、夫婦らしい。
「ど・ろ・ぼ・う?俺のことはトレジャーハンター様といいやがれ、クソババァ!」
紳士らしさのへったくれもない罵言を口にするロック。
婦人の顔が激しく歪んだ。
「この男…私の鞭で全身血まみれにしてやる!!」
そういうとロックめがけて鞭を振り回した。
身軽なロックは今度はそれをいとも簡単に避けてしまう。
「俺の恋人の足元にも及ばないなぁ…。
同じ女でもこういうアバズレは嫌いなんだよ。
おしとやかさの欠片も無い。」
更に怒りをあらわにする婦人の顔。
戦いはまだ始まったばかりだった。

「どうして子供を連れ攫って殺すんだ?ジル!」
「…あたりまえだ。あの若き肉体を食せばかつての若い体を取り戻せるからだ!」
セッツァーは黙ってしまった。
そんな残酷な迷信を信じ込むなんて…
「とにかくお前らを生かしておくわけにはいかん!
ここで死んで貰う!!」
「…上等だ!やれるもんならやってみろ!!
妊娠中の女房にお前の情けない話をしてやるからよぉ」
そういうとセッツァーも腰元から重い剣を取り出した。
「剣一本。それ以外の武器はナシだ。いいな!」
「分かったよ!ったくジジィの相手はかったりーなぁ。
手加減しといてやるから早いうちに降参しろよ。」
そうは言ってもセッツァーは剣をもった右手に力を込めた。
「いくぜ!!」

ロックと婦人の戦いは、すぐに決した。
大泥棒(?)ロックが婦人の鞭を盗んだからだ。
そのついでなのか、彼の手には他に婦人が見に付けていたネックレスだのイヤリングだのがあった。
「そ…そんな!」
未だに敗北を受け入れられない、婦人。
腕は後ろで組まれ、ロープで縛られている。
「旦那が捕まるまで大人しくしてな、アバズレ女。」
婦人はただじだんだ踏むしかなかった。

それに対してセッツァーとジルの戦いは決しそうにない。
思いの他、ジルは強かった。
「どうした傷男!!女房に俺を捕まえたと報告するんじゃなかったのか!」
今度はジルが罵声を上げる番だった。
それでも諦めないセッツァーは必死にジルめがけて剣を振る。
その刹那だった。
ジルは懐にあった短剣をセッツァー目がけて投げた。
不幸なことに、それは彼の左腕に命中した。
「うぐっ…」
とっさにその場に倒れこむセッツァー。
「くっ…剣一本で戦うはずだっただろう!」
「フン…お前などに正々堂々と勝負する義務など無い。」
そう言うとジルはセッツァーの頭に剣を振り下ろした。
「死ね!ギャンブラー!!」
その瞬間。
ジルの手が何者かの手に押さえられた。
かなり力のある男らしい、ジルの腕はピクリとも動かない。
「誰だ!!」
「そいつが死んだらレディを悲しませることになるのでね。」
ジルが振り向くと、そこには肉つきのよい、けどハンサムな体をした金髪の男がいた。
「エドガー!!どうして此処に?!」
ロックが叫んだ。
「久しぶりだな。友よ!
なぁに、愛しい妻がコイツのせいで息子に付きっ切りになって俺のことを構ってくれなくなっちまったのでね!」
エドガーは微笑んで手を振った。
気を緩めたその瞬間、ジルはエドガーの手を振り払い、後ろを向いた。
「まずはお前から殺してやる…死ねぇ!エセ国王めが!!」
そう叫んだ瞬間、剣を持っていた左腕を後ろにいた男に刺された。
「死ぬのはお前だ、犯罪人めが。」
セッツァーは静かに言うと剣を引き抜いた。
ジルは痛みから膝をついた。
「ま、お前みたいな野郎は火あぶりの刑にでもされるんじゃねーの?」
セッツァーは罵声を挙げた。
しかし痛みで我を忘れそうになった男にそんなものは聞こえなかった。


(あとがき)
バトルシーンをどうしても書きたかった(なんて奴)ので8・5という形で書かせて貰いました。
何とか王様も大活躍(?)しました。
ロック、セッツァーがいてエドガーがいないのは何か違和感があったので…
ジル…ごめん。
オリジナルキャラクターをこんな風に扱う人って私だけでしょうか?
あとロックがティナの事を恋人と言っていましたが…
てしゃばりました(私が)、ごめんなさい、つい出来心で…

Title
「オブリヴィオン」 8.5
Posted
2007/10/24
Category
ロクティナ・長編::★「オブリヴィオン」 百子

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