朦朧とした意識の中で私は自分が今何処か遠くの森の奥深くにいるのだと分かった。
「もう誰も、私を愛してはくれない…」
強い雨の中、そう呟きながら。
愛しかったロックには既に他に愛している人がいた。
家族の様に慕っていたシドにはもう妻子がいた。
そして、かつての仲間達にも…
「生きていても仕方が無いのね、私なんか…」
強い雨は私の意識を段々と遠のかせた。
そして遂に、私は強く強く降り注ぐ雨に当たりながら倒れた。
たった一人ぼっちで…
「ん…んんっ。こ…此処は?」
「…やっと目を覚ましたか、セリス。」
え…此処は何処?どうして私はこんな所に…?
「ど…どうして貴方が此処にいるの…?」
「は?何言ってる、此処は俺の土地だぜ?ついでに言っとけば、お前が入った森も、な。」
…そうか、何も知らなかったのは私の方だったのね…
「ごめんなさい…じゃあ早いうちにおいとまするわ。」
そういうと私はベットから身を起こし、起き上がろうとした。
「待てよ。」そんな私を、彼は止めた。
「勝手に人の土地に入っておいて勝手に出て行くなんて真似はさせないぜ。」
「け…けど…」
「じゃあお前は何処へ行くつもりだ?帰る家なんて、あるのか?」
帰るうち…そんなもの…
「無いようだな。じゃあ、決まりだ!今日から俺の嫁さんになって貰おうか。」
「え…そ、そんなこと…」
「じゃあ行き先なんてあるのか?
あいつに振られて、シドにも家族がいて、他の仲間の中にも入れなくって、ついでに言えば小さい時に両親に捨てられたお前に…」
私は、もう何も言えなくなった。
「一緒にいて、いいの?」
結局私はセッツァーと一緒に住むことになった。
結婚、はさすがにしなかったけど、それでも彼は私を置いてくれた。
彼は私にいつも言った、愛してる、って。
それは私にとって確かに嬉しい話ではあった。
けど…どうしても自分の心を開けなかった。
私なんかがこれ以上生き延びてどうするの?
いつも自分に問いかけていた。
そんなある日のこと。
「あの戸棚に色々と置いてあるから…けど赤いビンだけは触るな。
猛毒だからな。」
「どうして毒なんか…」
「自分保護のためさ。シドールの貴族様にもなると色々とあるのよ、厄介沙汰が。」
風邪を引いたので薬を貰おうと訊ねた私はなるほど、と頷いた。
それを聞いたのがまずかったのかもしれない。
再びあの気持ちが再発し始めた。死にたい、という気持ちが…
私は彼の目を盗んでこっそりとそれを持って部屋に入った。
そして、考えた。
彼が嫌いな訳じゃない、私だって、彼が好きだ。
けど…いや、だからこそ苦しいのだ。
また…ある日突然一人ぼっちになっちゃうんじゃないか、って…。
しかも私に一体何のとりえがあるというのだろう?
彼は私の事を愛してると言うけれども、どうしてなのだろう?
私より綺麗な人なんか、町中に沢山いるのに…
そう、この愛は…不安定なのだ、信じられないのだ。
「愛を信じられない私なんて、生きていても仕方が無いわ。」
残っていた思いを断ち切ると私はそれを一気に飲み干した。
「約束を破るとは…悪い女だな。」
ベットに横たわって動かない私に笑いながらそう言う、彼。
「セッ…ツァー…っ!これはっ…どういう…」
「それか?ああ、それは相手を痺れさせる時に使う”毒”だ。」
「そ…そんな…。」
「何の毒かまでは言わなかったぜ、俺。」
言うとセッツァーは私の髪を弄びながら言った。
「お望みなら、治してあげてもいいぜ。
但し、その場合にはある取引をして貰う。」
「と…取引…?」
「実際はギャンブルだがな。先に告白した方が、負けだ。
もし俺が負けたら何でも言うこと聞いてやるよ。
けど、お前が負けた、その時は…有無を言わさず結婚して貰う。」
そんなギャンブル…もうやったってしょうがないのに…
けど、この死よりも嫌な体の痺れはどうしても取りたい。
「…分かったわ、分かったわよ…」
「じゃあ、決まりだな。」
そういうと彼は私の口に解毒剤を流し込んだ。
それが、私達が今の様になるきっかけだった。
「それでくっついちまったんだな、お前ら。」
朝からチェスで負けたペナルティとして、娘にこんな事を語らなければならなくなった。
「けど結婚なんてしちまったって事は、賭けはお袋の負けだったんだな。」
「…ええ。」
言ってしまったんだ、あの日。
思い出した悲しさ故に泣く私を受け止めてくれた彼に。
「まぁ、そのお陰で俺が生まれちまったってことか。」
「ふふ…そういうことになるわね。」
私は笑いながら娘に言う。
「ところでよぉ…親父最近体格良くなってきてねぇか?間近で見てどーよ?」
「そ…そんなこと…」
私は顔を赤らめて下を向いてしまった。
それでも娘は面白そうに私を見てくる。
「おい、お前が起きねーから適当に作っちまったぜ。」
足で荒々しくドアを開けて部屋に入った彼は手にお盆を持っていた。
「え…作ってくれたの?」
そこにはチョコレートソースとホイップクリームがのった美味しそうなパンケーキが二皿あった。
「何だ何だ、お前もいるのか…一つ足りねーじゃねーか。」
娘を見てバツが悪そうな顔をする彼。
「私が半分分けてあげるから。」
私はそう言って、取ったケーキを真っ二つに切った。
ベットの上で私達3人は遅い朝食を取った。
(あとがき)
エドセリ、マシュセリ、ケフセリその他のセリスカップリングファンの方…ごめんなさい!!
ここはスルーして大目で見てやってください…。
いや、本当に…
ちょっとした出来心でして…(理由になってない)
ロクティナ小説もろくにかけないくせに何別のカップル書いてるんでしょうね、この人。
けどどうしてもセッツァーとセリスが如何にしてくっついたのかを言った小説が書きたかったのです!
お目汚しな駄作、本当に失礼しました…(改めて陳謝)
ちなみに題名は私が大好きな一曲から取りました。