「はあっ…」
段々と寒くなってゆく秋のある日。
椅子に座っていたパパがいきなりため息をついたのでびっくりした。
「どうしたの?」
私が聞くと、パパは晴れない顔で答えた。
「最近母さんの様子がおかしいと思わないか?
いつも何かソワソワしていて…
俺に何か隠し事でもあるのかなぁ、って。」
「あーー…」
確かに。最近のママはちょっと、変。
お腹を触ってカレンダーを見てはいつも考え事をしているし、何かしなきゃいけないことでもあるのだろうかと思っていた。
「だろ?最近変だよ、母さんは。
二人目の子供がお腹の中にいるっていうのにあんなに悩んでいたら体の毒だって。」
「まぁ、確かにね。」
まぁ、そうではあるんだけど…
いつものパパの愛妻家っぷりを見ているからか、どうしても心配し過ぎている様にも見えてしまう。
「聞いても『何でもない』で済まされちまうからな~
とにかく何かプレゼントでも贈ってご機嫌をとるか…」
全く…本当にママが好きなのね、と思ってしまう。
「へぇ、プレゼントするの?ママに?何を?」
「お、お前も手伝ってくれるか?」
勿論さ。こんなオイシイ話題に乗らない訳が無い。
「じゃあ早速何を贈るか考えようか。」
「は~い!」
言うと、私達は何がいいかを考えた。
「なぁ、モーグリなんてどうだ?」
へ?モーグリ?あの寒~いナルシェっていう都市に住んでる…?
「母さんはモーグリの頭をふかふかするのが好きなんだ。
きっと喜ぶよ。」
「駄目に決まってるじゃない!
そんなことのために無理やり連れてきたら、モーグリさんだって可哀想だよ!」
「そんなことって…母さんのためだぞ?」
ああ、恋に取り付かれると人は変わってしまうと言うけれど、それはパパみたいな人がいるからなのね…
『恋は盲目』とはよく言ったものだ。
「それにモーグリなんて…生きてるのだと大変じゃない!
せめて人形とか、あるいは何か別のものにすればいいじゃない!」
「別のもの?」
「そうだよ!マフラーとかセーターとか…」
「!ああ、そうか…!」
そうだよ!奥さんにモーグリをあげようなんて最初に提案するのはパパくらいだよ…!
「最近寒くなってきたしな…よし!マフラーを編んであげよう!」
「さんせ~い!」
私達は早速マフラー作りに取り掛かった。
パパが赤い毛糸を買ってくると、早速編み始めた。
けど…
「ちょっとパパ!完成してもいないのに何名前入れようとしてるの?」
「何って…誰からの贈り物かを入れておかなきゃと思って」
「まさかパパの名前だけ入れようってつもりじゃあないわよね?
嫌よ!私だって手伝ってる、というよりほとんど私が編んでるんだから私の名前だって入れてよ!」
「はいはい、分かりましたよぉ…」
そんなこんなでママに悟られること無くそれは完成した。
ママが友達の所へ行っているこの短い時間の中で仕上げたので、長さ自体は短いけれど、一応マフラーとしての形にはなっている。
「ねぇ!此処に変なこと書いてあるけどパパが入れたのよね、コレ!」
「変って…何処が?」
そこには”I Love You”と縫い付けられていた。
どれだけ『愛妻家』という証を施せばいいのだろう、パパは。
「もぉ、いいよ…」
これ以上ツッコミを入れていたらキリがない。
まぁコレはコレでいいとしよう。
そうすると私達はそれを包み始めた。
「ただいま~留守にしててごめんね~」
お待ちかねのママが帰ってきた。
「ティナ!会いたかった!」
言うとパパはプレゼントを差し出した。
「これ…何?」
「いや、最近お前が元気無さそうだったから…」
私も作ったのよ~と手を振ってアピールした。
「二人で作ってくれたの…?ありがとう!」
ママは嬉そうにそれを受け取った。
「開けていい?」
私もパパも勿論、と首を縦に振る。
するとママは早速それを開け始めた。
「……。これ、二人で作ってくれたの?」
いや、編んだのはほとんど私だけどね…
けどそれは言わないのが暗黙の了解というものだろう。
「ああ。」代わりにパパが答えた。
「へえ…」
ママはそれ以外は何も言わずにそれをじいっと見つめていた。
けど、何か思い出したのか、いきなりハッとして鞄の中に手をいれた。
「忘れてた!私からもプレゼントがあったのよ!」
そうして、赤いマフラーを二つ、取り出した。
そして、パパと私に一つずつ渡してくれた。
それを受け取ると、最近ママの様子が変だった理由が薄々と分かった。
「子供が生まれる前に4人分作りたかったんだけど、どうしても間に合いそうに無くて…
今日も友達に手伝って貰ってやっと3人分出来たくらいだったから…」
つまり。私とパパが今日作ったのでちょうど4人分だということ。
「じゃあもう心配事は無いな。」
パパは嬉しそうな顔で聞いた。
「ええ、後はこの子が元気に産まれてくれるか、だけよ。」
ママはお腹をさすりながら笑顔で答えた。
「お腹すいたね。もうそろそろご飯にしない?」
頃合を見計らって私がそういうとパパとママは頷いた。
(あとがき)
シリーズ化、のつもりでは無かったのですが…
何故か続いちゃいました。
結局前作同様、ロックが夫馬鹿ですみません…
皆さんが書くロックはみんなカッコいいのに、私が書くとこんな奴になってしまいます。
しかもしかも異様に長い、そして最後も微妙…
こんなのばっかりでごめんなさい、今度は夫婦ネタじゃないのも考えます。
(そう言っておいていつも思いつかないのですが…)
どうでも良くないことですが…
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、題名が間違えていたことに今更になって気が付きました。
本当はサのはずなのに家ではザになってて元の題名と悉く違うと言う…
けどこれはこれでいいとして(絶対に良くない)、今回もザのままでいきました。ご了承ください…