>>>百子 -- 07/11/18-06:42..No.[468]
大勢の人が集まるフィガロ城の大宴会場。
本当は、人が沢山いる所なんて好きではない。
時折、そこを離れたくなる。
けど…出て行く訳にはいかない。
私は皆と「世界の平和を取り戻した戦士達」として世界中の人々から感謝されているのだから。
知らない人たちが声をかけてくる。
私はそれに何とか受け答えしながらその場に立ち尽くしていた。
「ちょっと場を変えて話してくれないかい?」
誰かの声。
「ごめんなさい、今此処にいなければならない身なので…」
勿論私はそれを断ろうとする。しかし…
「いいから、いいから。」
男は私の手を引くと話しかけてくる客人達に会釈しながら大宴会場を後にした。
人間の世界の先にあるのは、見張りの兵士数人しかいない、寂しくて暗い廊下だった。
男はなお私の手を取って先へ行こうとする。
何か言おうとしている私の声など聞こうともせずに。
長くて暗い、しかも怖い廊下を渡ると、そこにはバルコニーがあった。
透明なカーテンが二つ、風に揺らめきながら舞っている。
揺れるそれを左右に引くと、そこからは町の景色が見渡せた。
静かで、切ない夜の町並。
けど何かしみじみとした趣があるのがいい。
私は身を乗り出しながら見た。
「気に入ってくれたみたいだな、マドモアゼル。」
言うと男は黒髪のかつらをバルコニーの外の世界に向けて投げた。
「あ…」そう、彼は…。
「ロック…!」「ああ、そうだよ、ティナ。」
言うと、彼は束ねてない私の髪を指で弄んで、キスをした。
「どうして…変装なんかして…」
「お前が勇者として注目を浴びているように、俺も人々からの目が絶えなかったからね。」
そう言って、彼は下手くそにウインクして見せた。
「お前だってこっちの方がいいだろ?静かだしさ。」
「…ええ。」それ以外は何も答えなかった。
「なぁ、ティナ。」
「?なぁに?トレジャーハンターさん。」
「お前の残りの人生を、俺に賭けてくれないか?」
遠まわしな言葉でのプロポーズ。
それでもここで戸惑ったら彼の思う壺なので、あえて黙ってみる。
「コール夫人として、俺の妻として、一緒にいて欲しいんだ。」
「……。」
彼の眼差しは冷めない。熱くなっていくだけ。
それは瞳だけではない、体中が、情熱に支配されているのだろう。
「…いいわよ、けど…」
彼の言葉を待たずに私は口を動かした。
「今の貴方では、駄目よ。」
「トレジャーハンターの俺では、駄目か?」
「ええ、私には大切な子供達がいる。
それを置いて行ってしまえというのなら、それなりの男でなければね。」
「どんな男になれば、ついて来る?」
私はフッ、と微笑んで言った。
「貴方が世界一のトレジャーハンターになったら、許すわ。」
(あとがき)
ティナが小生意気…
けど自分としてはコレが精一杯のシリアスです。(これが?)
次回は如何にしてティナがロックと再会するのか、を書ければなぁと…
「俺に賭けて」ネタは本当はセッツァーに使おうと思ったのですが結局ロックの言葉に。
こんなのばっかりですいません…続きます。