…最近、彼の様子がおかしい。
この前待ち望んだ娘が産まれたというのに、何処か不満そうな顔をしているのだ。
それでも彼は「何でもないさ。」と片付けてしまうのだけれど。
…何でも無いわけ無いじゃない。
そう、彼が何でも無いフリをする時というのは決まって何か良からぬことがあるときだから。
…娘が産まれたから、不安な事が出来たのかしら?
かつて共に戦った仲間達の中には、既に父親母親になっている者もいる。
彼らの中にもロックと同じような心を持っていた者がいるのだろうか?
私には何も分からなかった。
こういう時は、身近な人に相談するのがいいのかもしれない。
一番なのは父母の父母、つまり私かロックのお父さんとお母さんだ。
けど、ロックのお父さんは彼が幼い頃にトレジャーハンティングの事故で亡くなったそうだし(私がロックのトレジャーハントを心配するのもこのため)、お母さんも亡くなっているらしい。
そして、私のお父さんとお母さんも既に他界してしまった。
かつての仲間達も今はそれぞれで忙しい日々を送っているらしく、とても相談どころでは無さそうだった。
「…どうすればいいのかしら?」
溜息をついて、私は呟いた。
「何を?」
ガタンッ!!
私は椅子から転げ落ちそうになった。
突然、後ろから声がしたからだ。
幸い、彼が受け止めてくれたお陰で怪我こそしなかったけど。
「ロ…ロック!どうしてここに?」
「どうしてって…可愛い娘の寝顔を見に来ただけだよ。」
椅子を元に戻し、私を座らせながら呆れた口調で返された。
「で…何をどうしたいって?」
「え…いいえ、何でも…」
「俺がお前の前で不満そうにしてるのはどうして?って相談だろ?」
肩を大きく上下した私を見、彼はくっくっと笑う。
「図星だな。」
「けど、どうして…」
「決まってるだろ?俺にはお前の心が透けて見えるんだよ。」
そう言うと彼は私の口元を指で弄んだ。
「だってしょうがねーだろ?お前が、コイツに構ってばっかで俺に構ってくれないんだから…」
「何言ってるの!この子はまだ…んんっ!」
いきなり顎を持ち上げられて、唇を重ねられた。
私の言い分はここで遮られ、声にならない音に変わる。
「…可愛いな。最近ご無沙汰だったし…たまにはこういうのもいいだろ?」
唇を離した一瞬の間に喋ると、再び塞いだ。
そしてそのまま、私の身体を持ち上げてソファの上に押し倒した。
彼の唇が離れる頃、私の顔は信じられない程に熱くなっていた。
きっと、真っ赤になっているのだろう。
すると、彼はいきなり私の身体を離して踵を返した。
そして、娘が寝ているベットまで歩いていく。
「起きちゃ駄目だぞ?今からママとデートするんだから。」
まだ起きそうもない娘の前でそう呟くと、再び私の所に戻ってきた。
「…たまには相手してくれよ。俺だって、寂しいんだから。」
「…分かったわよ、甘えんぼさんね。」
…こうして、私の悩みは吹き飛んだのだった。
<あとがき>
えーっと…皆様ごめんなさい。
ロックをカッコよく書こうとしたんですが…酷い事になってますね。
ところで…
ロックのお父さんって事故死なさったそうですが、本当なんでしょうか?
何処かのサイトさんで見ました。
勝手ながら参考にさせて貰っちゃったんですが…。
読んで下さってありがとうございました!!
では