「ふい~っ!疲れた~!」
一人部屋の中で、私はそう叫んだ。
そんなに大きな声では無いので、隣の部屋まで聞こえてはいないだろう。
朝から晩まで、私は気配りをこれでもかとしながら周りの大人たちと付き合っている。
ここは紛れも無くモブリスの村だけど、昔とは全然違う。
昔は、大人と言っても私を除いたらディーンとカタリーナ位しかいなかった。
けど、世界に平和が戻ったのと共に、辺鄙な田舎の村にも多数の住民が押し寄せてきたのだ。
きっと田舎の方が農作業がしやすいからだろう、食料がままならない時だったから。
「ロックぅ…」
こんな時に口にするのは、いつも彼の名だ。
此処に来るまで、ずっと一緒に暮らしてた人達の一人。
*****
「ちょっ…まだ作り終わってないのよ!ガウ!」
セリスの声を無視し、ガウは作りかけの肉を頬張って行ってしまった。
「…お腹壊さなきゃいいんだけど…」
「…大丈夫なんじゃない?野生児なんだから…」
呆れるセリスと一緒に、私は料理の支度を急いだ。
「おい!遅ぇじゃねーか!」
セッツァーがテーブルに座りながら言う。
「じゃあ手伝いなさいよ!全く…」
今のセリスには、どんな言葉を売っても買い言葉が返ってくる。
怒りに触れるとまずいと思ったのか、彼はそれ以降黙っていた。
「いただきまーす!ってあれ…ガウは?」
「腹一杯だとか何とか言ってもう寝ちまったんだけど…」
ロックが苦笑しながら答える。
「しょうがないでござるよ…まだ幼子なのだから。」
カイエンはいつも彼をまるで自分の赤子を見るような目で見るのだ。
そんな感じで、ガウは不在のままその日は夕食を迎えた。
ーこれ程、楽しい生活は今までには無かった。
私はふと、そう思ったものだ。
ケフカ討伐後、エドガーやリルム、ストラゴスといった仲間達は帰るべき場所に帰っていった。
しかし、帰る場所が無い仲間達はこのまま別れる位なら、と一緒に住むことになったのだ。
私も本当は直にモブリスに帰るべきだったのだけれども、ここで彼らと別れたら、もう一生会えないと思うと留まらずにはいられなかった。
少し位なら…そんな甘えも手伝って私は2,3ヶ月の時を其処で過ごしたのだ。
ロックとセッツァーがお宝探しとギャンブルとで稼いで、それ以外の仲間達は家事をして…といった感じで暮らしていた。
いつもは戦友としてしか見ていなかった彼らも、こうして一つ屋根の下を共にするだけで色々な方向から見ることが出来た。
しかし、そんな中で一つだけ分からないものがあった。
ロックがどうやら、自分に好意を抱いているというらしいのだ。
セリスからこっそりと教えられて、可愛がられてあげたら、と言われた。
けど、どうして私なんか…それだけがどうしても分からなかった。
そんな中、私には帰らなければならない場所があることにやっと気が付いた。
駄目だ、私には子供達がいたのに…
それにやっと気づいた私は、仲間達との別れを惜しみつつ、彼らの元を後にした。
*****
「けど、此処での私は、ただのお邪魔虫だったのよね…」
かつて懐いていた子供達には、新しい養父母がいて、私が入り込めそうな場所なんて何処にも無かった。
むしろ、せっかく育てた食料を一人分無駄にしなければならないと思われているためか、村人達の目は冷たい感じだ。
「…みんなに、会いたい…」
そう思うようになったのは、今に始まった事ではない。
「…そうだ。」私はふと、机に向かった。
「せめて手紙位は、書きたい…」
ロックは、皆は今、何をしているのだろう?
それを知りたい。
私はそんな思いをしたためると、封をしてハトに飛ばして貰う。
懐かしい昔の思い出に浸りながら…
『ティナへ
明日、モブリスの村の近くで待ってる。
一応旅をする位の気持ちで荷物をまとめて来てくれないか?』
ロックからの手紙の内容は、それだけ。
一体何をするのだろう…?
私は手紙を包みなおすと大事に保管してその日を過ごした。
「…ファルコン?」
モブリスの村の近くに行ってみると、見慣れた乗り物がある。
早足で其処に向かい、ドアを開けると…
「久しぶり!」
懐かしい、仲間達がいた。
「みんな!…どうして、こんな所に?」
「元々こういう予定だったのよ!ティナには、ロックが連絡してくれる予定だったんだけど…」
私は泣きそうになった、と言うより、泣いた。
こうして仲間達と再会出来るとは、夢にも思わなかった。
「…今度からお互いに連絡を取り合える様にしましょう?
そうすれば、いつでも会えるわ。」
セリスが私の背を擦りながらそう言ってくれる、それも嬉しい。
私は首をこくこくと前に振ると、黙って彼女に抱きついた。
こうしてその日は、仲間達と楽しい一日を過ごしたのだった。
…それから一年後、ロックと結婚する事になるとは、私も含め、誰も分からなかった。
<あとがき>
皆さんお久しぶりです…百子です。
やっとネタが思いついたから…と書いたのですが…長すぎる。
本当にごめんなさい…要約が出来ない証拠ですね。
ロクティナらしい記述は…こんなに長いのに2,3行?
すみません…次回はもうちょっとラブラブっぽく書きたいです。
こんな作品ですが、読んで下さってありがとうございました!