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「テレパシー」 シスターM

 私の声は、届いていますか?

 『テレパシー』

晴れ渡る空を見上げていると、必ず思い出す笑顔。
どこまでも優しくて、どこまでも輝いている貴方の笑顔。
きっと今も、この同じ空の下で。
貴方は笑っているのだろうと、信じて。

───ロック。
私は、元気。


    *


世界が平和を取り戻したことで、彼の本業も、活動再開。
私が知らなかった、本来の彼への評価。
例えモブリズのような辺境の地に居を構えていても、依頼の使者はやって来た。
そして、その度に、彼は旅立って行く。
「行って来るな」
太陽みたいに、朗らかに笑って、私の頭をそうっと撫でて。
彼の背中を見送って覚えたのは、見送る寂しさ。
待つ不安。
そして、迎える嬉しさ。
どれも私が人として、経験していなかった事ばかりで戸惑ったけれど。


「ティナ、それはお惚気っていうのよ」
ある日相談してみると。
輝くばかりの黄金の髪を結い上げて、美しさに艶が増したセリスは、笑った。
「惚気……?」
「そう。『2人が今も想いあってて、ものすごーく仲良しだ』って事を、人に言ってるのと同じ」
得心顔の彼女の言葉は、私にとって初めてのもので、混乱する心を隠せない。
無意識に俯いて、考え込んでしまう。
「まあ、ティナ、ごめんなさい。あなたを悩ませるつもりじゃなかったのよ」
セリスは慌てて私へ近寄り、ぎゅっと抱き締めてくれた。
愛用している香水の、薔薇の香りがふんわりと優しく香る。
「いい?あなたはロックを大好きでしょう?だから当然の事なの、心配しないで。ね?」
大丈夫、と繰り返し、セリスは私を抱き締めてくれている。
彼女の優しい気持ちが、心臓の鼓動と共に届いて、嬉しくなって。
「セリス……ありがとう」
私は顔を上げると、セリスの白い腕をつかんで、笑って見せた。
セリスはそんな私を見て、また笑顔になってくれた。


「ティナはこんなに可愛いんですもの、ロックには過ぎた果報よね、本当に」
セリスが私の髪を梳きながら、悪戯っぽい笑みで言った、そのとき。
「───ったく、俺のいない隙に何の話してんだよ」
予想外に、ロックの声。
見れば、たった今帰って来たばかりの、埃っぽい旅装のままのロックが、腕を組んで仁王立ち。
いかにも不機嫌そうな表情で、彼女を睨みつけていた。
そんな彼に、セリスが笑いながら言う。
「あら!本当の事でしょう?」
「お前なあ!」
涼しげな表情で言うセリスと、子供のように率直な言葉を言うロックの遣り取りが楽しくて。
私はつい噴出してしまった。


「じゃ、またね」
セリスが颯爽と去っていくのを。私はロックと並んで見送り、家へ戻った。
扉をぱたん、と閉めたと同時に隣のロックの腕が伸びて、私は肩を引き寄せられて。
一月ぶりの温もりが、穏やかに包み込んでくれて、そっと目を閉じた。
「……ただいま」
「お帰りなさい」
交わす言葉はありきたりなものだけど、それがとても嬉しくて。
心がほんわり温かくなる、不思議で嬉しい感覚。
「───ティナ」
ロックは私の髪をゆるゆると指に絡めながら、耳元に唇を寄せて。
「ごめんな、寂しかったか?」
懺悔でもするかのような細い声に、ふるふると首を振る。
怪訝そうな表情で見詰めるロックに、笑いかけて。
「あなたをここで待っていられるのが嬉しい。そして……あなたが帰って来たときに、お帰りなさいって言えるのが、とっても嬉しいの」
正直に、気持ちを言葉に表してみた。

「ティナ……」

声を詰まらせたロックの抱擁が、強くなった。


    *


 喜びも、不安も……想いも、教えてくれた貴方には。
 私の気持ち、届いてますか?

 『愛してる』って、伝わりますか?

 ─────


久々に連投です<邪魔
甘めを書こうとすると、勝手に未来話になる罠ですが…。
誕生日には全く絡まないネタですみませんが、今月お誕生日の
百子様へ勝手に捧げます。
煮るなり焼くなりコピペなりでお召し上がり下さいませ。

Title
「テレパシー」 シスターM
Posted
2008/06/12
Category
ロクティナ・SS

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