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「ほたるのひかり」 シスターM

 こころの中の、ひかり。


   *


ティナの手を引き連れ出した、草原。

「見てごらんよ、ティナ、ほら」
「……ええ、見えるわ」

ちかり、ふわり、きらり、ほわり。
現れては消え、浮かんでは沈み、夜空に舞う光たち。

「蛍、っていうんだ」
「ほたる……」

噛み締めるように、呟いて。
ティナはじいっと、光を見つめる。

「何のために、光を出すの?」
「恋をするため、かな。他にも説はいろいろあるけどね」

俺はしばし考えて、説明。

「雄が恋人になってくれる雌を探すために、光を出すって説が有力」
「……そう」
「成虫になってからの寿命が短いんだよ。だから、必死なんだって言われてる」
「どのくらい?」
「1~2週間ぐらいかな」
「……そう……」

ティナは曖昧に頷いて、また蛍へ視線を戻す。

唐突に、ティナが口を開いた。

「短い命を、精一杯生きてるのね」
「え?」
「蛍って、きっと……自分の命を、知ってるのね」

何かの意思を宿した瞳が、強く輝く。
そして。
ティナは不意に、俺に握られたままの手を強く握り返した。

「ロック、ありがとう」
「……え」
「ここに連れて来てくれて。ありがとう」

にっこりと。
驚く程綺麗に微笑んだティナの、その笑顔は。
まさに輝くようで。

「……ああ」

俺は気恥ずかしくなって、ティナの細い手をもう一度、強く握るだけだった。


   *


 こころの中に、ひかり。
 蛍のような、ほんわりとした、やさしいひかり。

 
 +++++


素敵TOP絵を拝見して即座に浮かんだ駄文です。
今回はまともに甘めな気がします。

Title
「ほたるのひかり」 シスターM
Posted
2008/07/22
Category
ロクティナ・SS

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