きっとこれが、私。
*
「……ん、う……」
鍛錬を兼ねた探索の最中、野営で一夜を過ごした翌朝。
鳥のさえずりを耳にして、意識が眠りの底から覚醒。
両隣の仲間たちは、今も静かな寝息を立てていて。
静かに上半身を起こし、テントから出て周囲を見回す。
朱色の朝日が、藍色の星空を侵食しつつある光景。
本来求められる時間より、早く目覚めた事実を知る。
清浄な朝の空気に、不思議と感じる安堵感。
「……まあ……」
空を眺めていて目に留まった、朝焼けの空と消えゆく夜空の間。
ぽつんと佇む、細い月。
夜と共に消える事もなく、明るい空では寂しげで。
どちらにも、入れない。
人と、幻獣と。
どちらにも入れない、私のように。
「───ティナ?」
唐突に呼ばれる名前と、こちらへ向けられる気配。
目で追った先には、深夜から火の番をしていたロック。
「ロック」
「ずいぶんと早かったな、今朝は。おはようさん」
「……ええ、おはよう」
徹夜明けとは思われない満面の笑みに、笑って答える。
それから、言葉を続けた。
「ロック、火の番は私が代わるわ。少しでも、休んで」
「あ、そう?んじゃ頼もうかな、悪い」
「いいえ。あなたこそ、お疲れ様」
「ありがとな。んじゃティナ、あと頼むよ、お休み」
私の態度に疑問を持たなかったのか、敢えて従ってくれたのか。
笑顔の裏に心を隠す傾向のある、彼の真意はつかめないけれど。
それでも彼は、軽く私の頭を撫でて背を向けて。
他の仲間たちが休むテントへと、歩いて行った。
(……)
焚き火の元へ行き、再び空を見上げる。
藍色の空は、既に地平線の向こうへ去って。
朝焼けの朱の中に、寂しげな弓張り月。
静寂の中にも戻れず、光の中に溶け込むこともできない。
「あなたはまるで、私ね」
月からの答えは、あるはずもないけれど。
─────
我ながら暗いです。
最初はちゃんとロクティナ文にするつもりだったはずでした。
が、書き進めていくうちに何故かこんな文に。
イメージは、出生の秘密を知ってから後、魔大陸突入前で。
じゃないと小鳥鳴いたり、青空が出てたりしてないですし。
子供たちとの触れ合いを知る前のティナだと、孤独感が強そうなイメージがあります。
結局この世界唯一の個体(幻獣と人間とのハーフ)ですからねえ。
次はまともにロクティナ文を目指し…たいです<弱気