ひらひらと、舞い落ちる木の葉は。
樹の涙なのかもしれない。
過ぎ行く季節を。去り行く夏を。
仕方のないことと、諦めていてもなお。
堪えきれず、溢れる思いの形。
───羨ましいと、思えてしまう。
今の自分には、ないものだから。
*
その樹を見つけたのは、ほんの偶然。
破壊された世界、周囲が一面焼け尽くされた中。
ひっそりと、佇む老木。
裁きの光を受けずにすんでいたのは、奇跡というべきか。
でも。
どんなに葉を青々と広げても。
どんなに芳しい花を咲かせても。
それを、喜ぶ者は既になく。
それを、眺める者も既にない。
きっと、この樹はそれを知っている。
だから、今この場所に佇んでいても。
葉の一枚、花の一輪さえ。
彼はもう、見せてくれない。
「……この樹の時間は、止まっているのね」
新緑の輝きを、髪に宿した少女が呟く。
「もう、この樹は、何も見ようとしない。
人の心と同じく、樹の心は閉ざされている。
だから、ずうっとこのままで、眠っている。
咲き誇ることもなく、枯れることもなく……」
哀れみを込めた視線で、老いた巨木を見上げてから。
慈しみを込めた手が、そうっと木肌を撫でた。
今その樹の下に佇むのは、俺ひとり。
春の芽吹きも、夏の盛りも。
咲く花も、散る花も、全て忘れて。
自らの時を止めたまま、佇む樹の姿は。
過去の中に、心を閉じ込めたまま。
前を見ることさえ拒んだ、以前の俺の姿。
こいつは、俺と同じなのだ。
ただ、俺とこの樹の違いは……
「ロック」
乾いた風に吹かれても、萌える若葉の艶を失わない髪。
翡翠の瞳が、俺を映して。
「ティナ」
その名を呼ぶと、柔らかな微笑みが浮かんだ。
「そろそろ出発だって、呼んでいるわ、みんなが」
「わかった、行こう」
ふたり並んで、歩き出す。
そう。
あの樹には、今も。誰も現れない。
花を愛でる人も、その実を食べる鳥も、何も。
そして、俺には彼女がいる。
俺が愛して、そして、俺を愛してくれる、この人が。
ほんの、それだけ。
*
ひらひらと、舞い落ちる木の葉は。
樹の涙なのかもしれない。
過ぎ行く季節を。去り行く夏を。
仕方のないことと、諦めていてもなお。
堪えきれず、溢れる思いの形。
いつかはまた、あの樹にも。
涙を流す時が、来て欲しいと。
俺は心で、そうっと祈る。
───────
意味不明な文章で申し訳ありません←いつもだろ
自分を振り返るロック、を書いてみたくなりまして。
見事にダメでした~…