こんなハズでは・・・
ソファに座って紅茶を飲むティナを見て、ロックはそう思った。
せっかく再会したのに。楽しみにしてたのに、彼女に会えるのを・・・
なのに。
「・・・どうしてエドガーはいいんだよ・・・。」
いや、それはエドガーだけでは無かった。
セッツァーにもマッシュにも、そして事もあろうかウーマロにも。
ティナが肩を寄せてくれるのは・・・。
でも、ロックだけは別だった。
いくら傍に寄っても、二人の距離が縮まることはない。ティナが逃げてるからだ。
ロックがどんなに笑顔で寄ろうとも、彼女は逃げるばかり。
世界が崩壊して、再び会えてからというもの、まだまともな会話をしていない。
自分以外の男と喋る彼女を見て、何度胸の詰まる思いをしたことか。
「俺は、ティナ一筋なんだけどなぁ・・・」
このままじゃ、気持ちも伝えられないまま別れてしまうかもしれない。それだけは御免だ。
あっちが避けてくるんなら、こっちにだって考えがある。
だから。ロックは、その機会が訪れるのをただただ待っていた・・・。
*****
好機はすぐに訪れた。
一人でモグをふかふかするティナを見つけたのだった。
「おーし!」
ドアを閉めてしまえば密室といってもいいその部屋に、彼は堂々と入っていく。
ロックを見たティナは、途端に体を硬直させた。
逃げたい気分でもあったらしい、でも膝の上で眠るモグを起こす訳にはいかなかった。
ずんずんと歩み寄ってくる彼に、ティナはある種の恐怖を感じたらしい。
でも、ロックはそんな彼女にお構いなしに近寄り、隣に座る。
「いつ見ても可愛いねぇ。」
そう言って、ティナの髪を撫でるロック。
ティナは、緊張してるからか何なのか、未だに口を開かない。
もうちょっと彼女を苛めたかったが、その間に仲間の誰かがやってきてしまっては勿体無い。
そう察したロックは、単刀直入に聞いてきた。
「どーして俺を避けるのかなぁ?」
目を会わせようとしない彼女の頭をぐいとこちらに引き寄せて。
無理矢理目を合わせるようにすると、彼女は顔を真っ赤にした。
それにそそられたかのように、ロックはティナの首筋に指を這わせた。
「・・・っ!」
「ほらほら、動くとモグが起きちゃうぞ?」
反論する事も出来ないティナは、観念した様子で答えた。
「・・・ロックが、セリスの事好きだから。」
え?それって?
「もしかして、妬いてたの?」
本当は、ティナが一番好きだったんだけどなぁ。
どうしてこういう勘違いを・・・。でもまぁ、これで・・・
「違うのっ!ロックはセリスと一緒にいなきゃいけないの!
だから、私と一緒にいちゃいけないのっ!」
これで俺達も晴れてカップルに・・・そう思ったロックの期待は、見事に外れた。
「違うんだっ!俺はお前の事が・・・」
咄嗟にティナを抱きしめるロック。驚きのあまり何も出来ないティナ。
このまま、彼自身も予想だにしていなかった告白をすることになる・・・筈だった。
しかし・・・
「痛いクポ~~っ!!」
先ほどまで知らず知らずの内に彼の手伝いをしていたモグが、今度はロックのお邪魔虫になってしまった。
寝起きが人(?)一倍悪いのだ。
「あっ・・・ごめんなさい。話は、また後で・・・」
顔を紅色に染めたまま、ティナはモグをあやした。
ロックは、諦めたように部屋を後にした。
「う~ん・・・今日も進展はナシ、か。」
でも、いくら純粋なティナでも気づいてくれたのではないだろうか。
彼が、どんなに彼女を愛しているかに・・・
それだけでも収穫として受け止めたのか、ロックは晴れ晴れとした顔でその場を去って行った・・・。
【あとがき】
久しぶりの投稿になりますが・・・相変わらずな駄作ですいません。。
今回は久しぶりにnot家族ネタでやってみましたが・・・どうでしょうか。
5月になって大変な事がいろいろとあるかもしれませんが、皆様お元気で・・・
ではっ短いですがこの辺で