ぽたぽたぽた、降り注ぐ、しずくたち。
*
(……まあ……!)
外を歩いていて、頬をひたりと叩いた感触の、正体に。
気付けば自ずと、笑みが零れる。
「ロック!」
慌しく家へ駆け込み、扉を大きな音で開くと。
転げるように居間の扉から出てきたのは、私の大事な旦那様。
「ティナ、どうした!何かあったのか」
見れば愛用の剣まで握って、余程私に何かあったのかと危惧してくれたのか。
真剣な表情が、申し訳ないと思う。
「あのね、ロック、素敵なお知らせよ」
「へ?」
未だに剣の柄を握ったままの彼へ、私は笑顔で。
「外を見て!雨が降ってきたの!」
「…… マジでか!?」
一瞬の間を置いてから、彼は剣をそのまま手放し。
がらん、と大きな音を立てて床へ転がるのも気にせず、外へ駆け出した。
「うっわぁ……!」
年齢不相応のロックの歓声を頼りに、小走りで外に出ると。
(わ、あ……)
乾いた大地の辺り一面を、降りしきる雨が湿らせていく。
「良かったなあ、これできっと大地の作物も、うまく育つよ」
「本当ね。それに動物達も、やって来てくれね、きっと」
「ああ、勿論さ」
ふたり並んで、濡れるのも構わずに、空を見上げる。
大地を潤す雨のシャワーは、本当に久し振りで。
ケフカに壊されたこの世界が、確実に復興に向かっていることの、しるし。
「ねえ、ロック」
私はふと、彼へ問いかける。
「何?」
「いつかまた、この地にお花は、咲くかしら」
その疑問に、彼は笑顔で頷いて。
「勿論咲くよ。絶対に、花は咲く」
「本当?」
「ああ、本当さ」
それから、私の耳へ唇を寄せて、囁いた。
『花が咲いたその時は、その花をブーケ代わりにしような』
『…… え?』
*
降り注ぐ、しずくたち。
どうか、草を、花を、見せて。
しずくの中の、彼の約束の言葉の意味。
そうしたら、わかるから。
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こんにちは。6月という事で、雨をお題に一ひねり。
なのに無茶なお話になったのは何故?
とりあえず、幸せになってもらいたいですね、ティナには。