人生なんて、そんなもの。
ほんの少しの、偶然。
*
それは、俺に与えられた、ひとつの指令。
『魔導の少女を救出せよ』。
帝国内部でも恐れられるほどの力を秘めた、最終兵器を。
リターナー側の切り札として、利用するための手段。
不思議と、他人に警戒心を抱かせない俺が。
この任務を果たすうえで、選出されたのは、必然か。
初めて目にした、少女の姿形に。
驚愕を隠すことなんて、できやしなかった。
精密に造られた人形のように整った顔だちに、翡翠色の髪。
恐らく、事前に情報を得ていなければ。
誰がこの美しい少女を『魔導の少女』と認識できただろうか。
幾多の戦いを経て、彼女は人として成長を遂げて。
俺は、過去の試練に別れを告げて。
いつしか、お互いを『かけがえのない人』だと意識して。
でも、何も告げられないままに。
最後の時が、訪れて。
……彼女は。
*
人生なんて、そんなもの。
ほんの少しの、偶然。
でも、俺たちには。
俺にとっては、必然。
*
全ての力の、源が消滅して。
未だ、彼女は目覚めない。
全ての命を、この手で守り抜いた。
彼女は未だ、目を開かない。
未来を見ることを、拒絶したかのように。
「ティナ」
俺は毎日、瞳を開かない彼女に声をかける。
「今日はいい天気だぞ、少し散歩でもしような」
久々の、小春日和。
車椅子に華奢な彼女を乗せて、意気揚々と野原に向かう。
命の息吹を取り戻した世界の、爽やかな風を受ける。
深呼吸をして、未だ目覚めぬ眠り姫を見つめる。
深い眠りに入ってから、既に数ヶ月を経て。
華奢な体躯が、一層痩せ細ってしまったことを感じた。
………今度こそ。
どうぞ、目を開けて欲しいと。
*
人生なんて、そんなもの。
ほんの少しの、偶然。
でも、俺たちには。
俺にとっては、必然。
そして、君にとっても。
*
突然、突風が吹いた。
「うわっ!」
思わず瞼を閉じて、ティナをかばうようにして。
荒々しいつむじ風を、やり過ごすと。
「───ロック……?」
懐かしく、愛おしい、君の声。
「ティナ!?」
きらりと輝く、透き通った瞳は。俺だけを捉えていて。
「……ロック」
眩しいほどに、儚げで。でも、確かに微笑む、君がいた。
こみ上げる想いのままに、抱き締める。
自分の想いを、その熱ごと、伝えたくて。
「ロック……。あの、ね、お誕生日、おめでとう」
意外な君のひとことが。
「───サンキュ」
俺の心に、温かな安らぎを溢れさせた。
*
人生なんて、そんなもの。
ほんの少しの、偶然。
だけど。
俺と君には、必然で。
そして。
ほんとうにたったひとつ、大切なもの。
彼女にとって、俺が一番であるように。
俺にとって、彼女は。
唯一無二の至宝であり、たったひとつの存在。
……もう、離さない。
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…い、一応ロクティナのロック誕生日企画ですが…(汗)
見事にわけわからんものになりました(泣)。ごめんなさい!