どうかひとりで、泣かないで。
泣きたくなれば、教えて欲しい。
*
「ティナ」
彼の声の調子が、いつもと違っていて。
こんなとき、どうしたのか、なんて訊くのは厳禁。
「ロック、ちょうどいいわ。マッシュから珍しいお茶、もらったの。一緒にどう?」
そんなことを言って。
彼が頷いて、そうっと入ってくるのを見ていればいい。
お茶を片手に、彼が話し出すのは。
永遠に続くかもしれない、暗闇の時間。
私を通して彼が見ている、誰よりも大切なひと。
生きてはいなくて、でも死んではいなくて。
抗う術も、何もない。
やがて、彼が立ち上がり。
不意に私を、背中から抱き締めて。
肩にぎゅっと、顔を埋めて。
「………っ」
懸命に、こらえる嗚咽を。
私はただ、静かに聞いているだけ。
このまま、彼の涙は枯れないのかもしれない。
私を見てくれるときは、永遠にないのかもしれない。
でも、それでも。
私には、あなただけしかいないから。
だから、報われようなんて思わない。
あなたが私に、人の笑顔をくれたから。
あなたが私に、人の心をくれたから。
だから、ずうっと。
私がずうっと、そばにいる。
涙をそうっと、受け止める。
*
どうかひとりで、泣かないで。
泣きたくなれば、そばにいる。
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元ネタはドリカム「優しいキスをして」なんです…。
歌詞が綺麗で痛くて…思わず浮かんでしまったので書いてみました。