この手の温かさを、感じると。
ここにいるって、思えるから。
*
私がこの世に、ひとつの命として、生を受けた日。
それは、ひとつの区切りのときで。
だけど、何かが変わるわけじゃない。
それでも。
人は私を祝ってくれる。
人は私に伝えてくれる。
「ロック」
「ん?」
考え事の度に、この場所へ来ることが多かった。
ここは、世界を見渡せる場所だったから。
それを誰かに告げたことなど、なかったのだけれど。
貴方だけは、気づいていた。
今日もあなたは、ひとりで来たから。
私はそうっと、寄り添って。
貴方は黙って、許してくれる。
「どうして、誕生日って、『おめでとう』なのかしら」
「へ?え!?………うーん………」
両腕を組んで、考え込んでから。
彼はやがて、ぽつりと語る。
「───ごめん、うまく言えない」
「そう……」
「ごめんな」
彼はそう答えると、私の髪を手で弄ぶ。
そっと手を伸ばし、大きくて温かなそれに触れた。
とっても温かい、ロックの手。
言葉を発せずとも、私を温めてくれていた、手。
出会ってから、今までずっと。
私を、守ってくれた、手。
(……あ)
「ロック」
「ん」
私は彼の手を、きゅっと握った。
私の手を通して、彼の温かい心が。
私の体の隅々まで、染みとおってくる。
「私の『おめでとう』、見つけた」
「?」
私が今、ここに。
他の誰でもない、貴方の傍に。
今こうして、いることが許されていること。
貴方が拒まず、受け入れてくれていること。
これが、私への『おめでとう』。
*
この手の温かさを、感じると。
ここにいるって、思えるから。
だから私は、ここにいたい。
貴方の傍に、ずっといたい。
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「お絵かきBBS」内のYUKIさんが描いたイラストを元に描いてみました。
…が、ダメでした…。