太陽の光なしには、輝くことを許されない。
そんな、存在。
だから。
私はあれが、綺麗だと思うのかもしれない。
*
全ての生きるものが、闇の中に安らいで眠りに就く時間。
それが、夜。
心地良い静寂。沈黙が私を包む。
ふと、思いつくままに歩いてみた。
かつての私には、思いも寄らなかった行動。
飛空艇を停泊させている草原には、微かに虫の声。
単なる雑音だと思っていたそれにも、意味があるのだと。
教えてくれたのは、彼だったように思う。
『全部虫たちの声なんだよ』
人好きのする優しい笑みで、そう教えてくれた男性。
誰よりも悲しい色を宿した瞳と。
誰よりも温かい色を宿した空気。
そして。
誰よりも悲しい色を湛えたココロをずっと、抱えていた人。
例えどんなことがあっても。
あの人の中に宿る、例えようもない空虚感は、なくなることがない。
それは。
希望に満ち溢れている人間の、それではなく。
全てのココロを閉ざした人間の、それに酷似していた。
……恐らくは。
あの男に、近しくて。
「……ティナ?」
名前を呼ばれて、どきっとした。
青いバンダナが、風に揺れていた。
「ロック」
「どうしたんだ?眠れないのか?」
真剣な眼差しで、私の瞳を見つめるその優しさには。
偽りなどなく、ただ私を案じてくれているのがわかって。
「大丈夫」
私は静かに、告げた。
「綺麗だから、見たいと思ったの」
「何を?」
「───あれ」
私が空を指差すと、彼はすぐに感づいてくれて。
確かに綺麗だな、と。
そう、笑っていた。
……貴方も。
「月みたいね」
「え?」
彼の頭に浮かんだであろう疑問符には、答えない。
私はただ、黙っているだけ。
『真実』という太陽を得るまで。
貴方が笑えないのならば。
いつか、絶対。
絶対に貴方を……。
(終)
久々に一作捻ってみております。
スミマセンです。