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「ワガママに」 シスターM

 もしもこの手を伸ばしたら。
 ちゃんと貴方に届くのですか?

      *

短い手紙は、今彼が真剣になってる証拠でもあって。
少年みたいにきらきらした目で、奥へ奥へと歩みを進めているはずなんだ、って。
それは間違いのないことなのだけれど。

……「寂しい」って。
思うのは、いけない事なのかな。

「それは当然よ!」
久し振りに辺境の我が家を訪ねてくれて。
大声を上げたのは、かつての仲間。
もうすぐ某国の妃として、同じ仲間のひとりと共に歩むことを決意した女性。
金糸の如く流れる髪も、白い肌の艶もかつて以上。
サファイヤの瞳は、鏡よりも強く輝く。
そんな彼女が。
私の言葉に、突然興奮したものだから。私は驚いてしまった。
「セリス……?」
首を傾げる私に、彼女はまくし立てる。
「ああっもう!あの男ったら、一体どこまでお馬鹿なの!」
それから、私の手をがしっ!と握り締めて。
「ティナっ!あなた、もう少し厳しくていいわ!ロックはあなたが彼に甘いことを知ってるから性質が悪いもの!もう、あの男は……」
大きくひとつ、溜息をついた。


セリスは『ティナはもっと我侭にならなきゃいけない』と言って帰った。
私はひとり、ソファにもたれて考える。
我侭って……なんだろう。
相手を困らせるような言葉は、使っちゃいけないんじゃないだろうか。
ふと、そんなことを考えた。


「ただいま」


不意に届く声は、久しく耳にしていなかったもので。
青いバンダナの彼は、ちょっとだけ埃っぽい服で。
それでも、笑顔だった。
「……ロック」
「ティナ、ただいま。ごめんな、手紙も不精して」
ロックは、服のポケットをごそごそ探って、何かを取り出すと。
私の掌に、そうっと乗せた。
「これ……?」
きらきら光る、緑の石。
「綺麗だろ、それ。洞窟で見つけたんだけど……その色見てたら、その、ティナのこと思い出しちまったから……そのまま持って帰っちまったんだよな」
ロックは、ぽりぽりと顎をかいて。
「そんで……どうしても、会いたくなったから……その、用事はとっとと終わらせて、帰ってきたんだよ、な」
とんだ我侭だよな。
そう言って、ロックは笑った。


───今なら。
今なら、言えるかな。


「ロック」
「ん?」
笑顔を向けてくれたロックに、私もにっこり笑い返して。
「お願いがあるの」
ひとつだけ、深呼吸してから。
私は、ひとことを言った。


『私も会いたかった』と。


それが、私の我侭。
そして、彼の我侭。

   (終)

突発意味不明駄文につき、内容のまとまりのなさはご勘弁を。

Title
「ワガママに」 シスターM
Posted
2005/09/28
Category
ロクティナ・SS

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