はらはらと。
音もなく舞う、あれは。
儚くて、綺麗だと。
貴方が言った。
*
ナルシェの街では、珍しくも何ともないそれ。
あまりにも日常茶飯事だから、誰も関心を寄せないそれ。
でも。ティナは、目を留めた。
「ロック、見て」
濃い藍色の、彼女の外套に、大きな粒。
「これは、何?」
「雪の結晶だよ」
「……花のようね」
「そうだな」
『六花』という雪の異名を。
ティナは興味深げに聞いて。
「こんなに綺麗なのね、雪って」
空を見上げて、呟いた。
「冷たいものだとしか、思っていなかったわ」
独り言のように、言葉を紡ぐ。
「真っ白なだけではなくて、こんなに綺麗なのに……儚く融けて消えるのね」
寂しげに目を伏せて。
「……何も、残さずに……」
何を思っての言葉なのだろうか。
俺にはわからなかったけれど。
「ティナ」
ただ、彼女は泣いているように錯覚したから。
「君が気づいてくれたから、きっと雪は満足してる」
恐らくは、見当違いな慰めを口にして。
でも。
俺の慌て振りに驚いたのか、彼女は一瞬目を見開いて。
それから、微笑んだ。
「ありがとう、ロック」
*
はらはらと。
音もなく舞う、あれは。
貴方に似ていると。
俺は思っている。
儚げで、綺麗で。
──────
2月なので雪をお題に、一応ロクティナ駄文です。
時期はティナの暴走直前、場所はもちろんナルシェを想定しております。
んな語ってる時間あったんかい!という突っ込みはご容赦を…。
バレンタインデー的なものを書いてみようとして挫折したところです。
思いつかなかった…。