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「未来へ。」 シスターM

私が見た夢。
世界が壊れる前と同じ、青く明るく高い空。
みどりの草原、優しい風。
溢れる光、咲き誇る花。
そこで微笑み、空見るあなた。

……隣には、誰かいる。

     *

目覚めれば、いつもと同じ。
飛空艇の中、与えられた部屋の天井。
耳慣れたエンジン音を、ぼんやり聞いて。
のろのろと起き出し、身支度を整える。

口渇感を覚えて、とりあえずキッチンへ足を向ける。
冷たい水を口に含んで、やっと意識が鮮明になる。
こんなに不安定な心、久し振りだと自嘲気味に笑う。
きっと、自分が見た夢のせい。

世界の平和のためには、魔導の力は今や必要ではなくて。
そのために、私たちは三闘神を何としても倒す必要がある。
彼らこそが、魔導の力の源だから。
そう、それは私たち全員の、共通の認識であり使命。
必ず果たさねばならぬ、必要なこと。
皆それぞれに、大事なもののため。この世界を、守る。

───私も、それは、同じ。

だけど、ひとつだけ。私と皆の、大きな違い。
皆は命を懸けて、この使命を果たす。生きるために。
私は命と引き換えに、この使命を果たす。

「お、ティナ? 早いな」
私の思考に割って入る声。私の大好きな、声。
「ロック、あなたこそ」
「そっか? だよな、今日はたまたま早く目が覚めちゃってさ」
笑顔で答えてくれるその様は、とても年上には見えなくて。
時には優しく、時には強く。でも、親しげで、明るくて。
陰を背負って生きてきた人だから、光の大切さを知っている。
「さて、と。今日もがんがん戦って、早く世界の平和を取り戻さないとな!」
大仰に言って、腕を振り回す。子供のような仕草が、愛らしい。
「な、ティナ?」
「……ええ」

彼の声が弾んでるから、私は自然と笑顔になったようで。
私を見る彼の顔が、だんだんと赤らんでくるのを認めた。
「? どうしたの?」
尋ねると、首を激しく左右に振ってから、彼は小声で教えてくれた。
「ティナ、最近笑顔が、その……か、可愛くなったな、って。うん、そ、そんだけ。じゃ、じゃな!」
バタバタと、トレジャーハンターという職業には似つかわしくない足音が去っていく。

暖かな気持ちを覚えて、心が浮上するのがわかった。
きっと、彼の笑顔のおかげ。
「ありがとう」
そうっと一人、呟いた。

     *
私が見た夢。
世界が壊れる前と同じ、青く明るく高い空。
みどりの草原、優しい風。
溢れる光、咲き誇る花。
そこで微笑み、空見るあなた。

……大好きな、笑顔。

こんな未来が守れるなら、私はきっと、戦える。

Title
「未来へ。」 シスターM
Posted
2003/03/22
Category
ロクティナ・SS

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