それは。
ほろほろと。
ただ、ほろほろと。
ぼくのほほを、ながれおちて。
どうしたら、いいんだろうね。
*
大事なものを突然失う瞬間は。
もう二度と、経験なんてしたくない。
レイチェルの手を掴めなかった自分の手を、何度血が出るまで握り締めて、そう思ったろうか。
なのに、俺は。
また、君の手を、離してしまった。
届かなかった手。
止められなかった覚醒と、暴走。
耳について離れないのは、悲鳴にも似た少女の叫び。
『助けて!!』
確かに感じた、彼女の心。
手をしっかりと握っていれば、止められたかもしれないのに。
自分を覆う悪意と、初めて曝け出された感情に、ただ怯えていた少女の心を、守ってやれたかもしれないのに。
「……ティナは西の方角へ飛んでいった」
探しに行く、との仲間の決断に俺は頷いて。
彼女が飛び去ったという、西空を見上げた。
「ロック……どうしたんだ」
仲間に声をかけられて、首を傾げると。
「気づいてないのか?」
頬に触れられて、初めて自分が涙を流していたことを知る。
これは、自分への怒りか。
それとも。
届かなかった少女への、謝罪か。
───どちらにしても。
「必ず探し出してやるからな、ティナ……待ってろよ」
流れる涙を、止める必要なんて、今はなかった。
*
それは。
ほろほろと。
ただ、ほろほろと。
ぼくのほほを、ながれおちて。
ぼくのこころに、しみていくよ。
きっと、きみにあえるまで。
─────
意味不明なロック一人称ですね。
場面はナルシェ、ティナの力が暴走するあのシーンです。
恋を自覚していなくても、ティナを誰よりも懸命に探そうとするロックであって欲しいものです。