君に告げたら。
何もかも、
終わる気がしてた。
*
『ありがとう』
きらきらと、輝いて。
眩しさに目を細めてしまうほどの、笑顔で。
君は俺の背中を、とんと押して。
それから、手を振って。
光の中に、消えていった。
「……ロック」
気遣ってくれるセリスの声に。
「俺はもう、大丈夫だ」
答えることができたのも、笑うことができたのも。
全てが、あの言葉と、笑顔のおかげ。
俺の愚かしい行為にも、何一つ咎めたてせず。
ただ、感謝の言葉を。
そして、別れの言葉を。
餞にくれた、君。
──レイチェル。
『……サヨナラ』
そうっと、風に乗せて、囁いた言葉が。
君に届けばいいと。
君の心の輝きを受け継いだ魔石を胸に、ただ想った。
*
君に告げたら。
何もかも、
終わる気がしてた。
*
『……ありがとう』
きらきらと、輝いて。
悲しいくらい、透き通った声を発して。
空を目指して飛び立つ、君。
俺のために、皆のために。
世界を選んだ、その姿。
「ティナ、戻って!」
セリスの悲痛な声も、既に届かない君の心。
「ティナ!!」
俺の言葉でも、君はもう振り返らない。
存在の消滅を予感しつつも、なお戦い抜き。
この世界に未だ残っている、多くの生命のため。
この世界で出会い、共に生きた仲間のため。
全てを捧げ、全てを捨てて。
消えることを選んでしまった、君。
──ティナ。
『サヨナラなんて……言わせない!!』
そう、これは。
俺たちの戦いの終わりで。
俺たちの新たなる始まりだと。
君に必ず、教えるから。
だから。
戻ってきて。
*
君に告げたら。
何かが、絶対に。
始まるから。
終わらせない。
絶対に。
今やっと始まろうとしてる、俺と君との、物語。
(完)
ちょっとわかりにくいのですが、前半はロクレイ的文章です。
一瞬の逢瀬と永遠の別れ、そしてロックの旅立ちを描いてみました。
後半はかなり捏造しまくったラスト近くのあの部分です。
ティナの強さと儚さがとても感じられて、私が大好きなシーンなのですが…文章化はいつやってみても難しいです。
まだまだロクティナ文、修行が必要ですね。