きっと、君に似合うと思うから。
僕は君に、贈りたかった。
*
ケフカを倒し、新たな世界を作り直すための糸口を、俺たちが掴み取った日。
ティナは、髪をずうっと束ねていたリボンを静かにほどいて。
緑の輝きは、風に緩やかになびいていた。
そして彼女はゆっくりと、俺たちに向き直ると。
ふんわりと、微笑んだ。
「風が、気持ちいいわね」
彼女の緑の髪は、新緑のように艶めいて輝く。
その輝きに、俺は目を細めて。
「そうだね」
一言だけを、返す。
滲んできた視界を変えるために、きつく目をこすって。
無理矢理にでも、笑った。
「世界は、元に戻るのかしら」
眼下に広がる、荒れ果てた大地を見つめながら。
ティナはそうっと、呟く。
「元には……戻らないよ、多分」
俺は静かに、答えを返した。
ティナは視線を俺に向け、悲しげな表情をしていた。
俺は彼女に微笑んで、付け足す。
「ティナ、世界は前のままには戻らない。1000年前の魔大戦のときと一緒だ……あの時人は、魔導の力に頼らない世界を、作り上げただろう?前とは違う世界に、さ」
「……ええ」
怪訝そうな表情ながらも、ティナが同意したのを見て取ってから、俺は言葉を続ける。
「だから、世界はまた新たに作られるんだよ。新しい力と、新しい秩序と……新しい心で、さ」
「ロック……そうね」
俺の言わんとする事を理解して、ティナの表情が明るくなった。
「新しい、世界」
ティナがそうっと、囁くように言葉を紡ぐ。
春の日溜りのように、柔らかな笑みを浮かべて。
自らの消滅を覚悟していた、最後の戦いのときには、決して見ることのなかった光を湛えて。
……希望を、胸に抱いて。
今、俺の目の前にいるティナは。
今までで、一番綺麗な、ティナだった。
俺が本当に見たいと思った、幸せな、ティナだった。
再び、視界が滲んできて。
俺はまた、乱暴に目をこすった。
*
君の、心からの笑顔は。
きっと、君に似合うと思うから。
僕は君に、贈りたかった。
僕は、それが見たかったんだ。
─────
エンディングの髪をほどくシーンからの妄想。
いい感じに甘くできたと思うのですが…。