あの空に。
私も。
*
崩れる塔と、砕ける魔石と。
身体から抜けていく、『わたし』の全て。
もう、全部、終わる。
「全員乗っただろうな!?もう出すぞ!」
ようやく辿り着いた、飛空艇の甲板。
舵を握りしめ、セッツァーが叫ぶ。
「セッツァー!私が誘導するわ!」
最後の力を、集中する。
自分の身体が、ふわりと空中へ浮き上がるのを感じる。
「ティナ!?」
誰かが名前を呼んだのが、わかったけれど。
もう、時間がないから。
「着いて来て!」
一言だけ叫んで、全力で空間を飛んだ。
飛んでいる間も、次々と崩れ落ちていく瓦礫。
あの塔を作っていた、全てが壊れていく。
まるで、あの男がそれを望んだかのように。
瓦礫を避けながら、ぎりぎりの空間を飛び続けるのは。
正直、今の身体には堪えたけれど。
……これが最後だから、自分を叱咤激励して。
空間を、飛んだ。
『………!』
息を飲む。
目の前が、開けた。
空の青が、眩しい。
青い空。
ケフカが世界を破壊したあの時から、失われていた色。
初めて空を飛んだのは、力を自覚して、暴走した日。
あの時も空は、青かった。
強過ぎる力に自制を失い、ただ滅茶苦茶に飛び回ったあの日。
空は、確かに青くて。
あの時は、空を切り裂くように、飛び回ったけれど。
今は。
身体中の力が、空の青に、溶けていく。
『わたし』の全てが、溶けていく。
見つけた。
……とうとう、見つけた。
「ティナ、もういいわ!戻って!!」
誰かが、呼んでいる。
でも……。
私、もう、戻れない。
……そう。
これで、全部終わる。
*
今ならきっと。
私も空に、なれるから。
─────
…暗いですね…。
クライマックス、消えることを覚悟していたティナの気持ちを表現してみたつもりなのですが。
ロクティナ要素を入れる隙が作れませんでした(涙)。