煩わしい機械音は嫌い。
帝国内で、朝から晩まで。
いいえ、一日中鳴り止まなかったあの音は嫌い。
あの音が、体中に染み込んで。
いつしか、自分の心音さえ。
機械音に変わってしまいそうで。
嫌い。
キライ。
*
飛空艇の甲板は好き。
機械音が耳に届かなくて。
眠れなくなるほどの、動悸を起こすことがあるから。
たまに夜、こっそり部屋を抜け出して。
星を眺めながら、眠るのが好き。
風を受けながら、眠るのが好き。
「ティナ!?」
今日も毛布に包まっていたら、偶然ロックに発見された。
慌てて駆け寄ってくる、足音が聞こえる。
無骨な鎧を着込んだ兵士ではない、その軽快な音は。
人間らしくて、好き。
足音を子守唄に、うつらうつらしていたら。
毛布ごと、抱き上げられた。
「駄目だよ、こんなところで眠ったら、体を冷やす」
親切のつもりで、船室へ運ぼうとするのを。
必死になって、止めようとする。
怖い。
あの音が、キライ。
するとロックは、私の部屋ではなく、自分の部屋へ向かい。
私を毛布ごと抱き締めたまま、ベッドに横になった。
「ティナ……俺の、心臓の音、聞こえる?」
どくん、どくん、どくん。
ああ、確かに聞こえる。
無機質な機械音じゃなくて。
人が奏でる、何より温かい、音。
命の音。
心の、音。
「……今日は一緒に眠ろうか」
おやすみ、と囁き声がして、部屋の明かりが消された。
毛布越しに、ロックの腕の力を感じる。
力強い、鼓動を感じる。
温かい。
優しい。
……やさしい。
自分の心臓に、手を当てる。
どくん、どくん、どくん。
力強い鼓動。
今日は、眠れるような気がして。
私は目を閉じた。
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微甘文章を目指したのですが、いかがでしょう?
来月・再来月と誕生日もありますし、ソフト移植販売ですし!
今年中に何とかあと4本ぐらいはこちらに投稿したいです。