君がここにいる奇跡。
君がここにいるまでの軌跡。
蝋燭の、繊細なまばゆさに涙が出そうなほど。
カチッ。
ボーン…ボーン…ボーン…ボーン…
「誕生日おめでとう、ティナ」
「ありがとう、ロック」
布団の中から二人はくすくすと、忍び笑いをもらした。
もう寝ようと言ったティナに、日付が変わった瞬間おめでとうが言いたいから起きていようと言ったのはロック。
今か今かと時計が鳴るのを待っていた。
「でもね、私の誕生日はもうひとつあるの」
「え?」
「私とロックが出会った日」
操りの輪がとれたあの日、二人目の私が生まれたの、とティナが微笑む。
「そうだな……」
ロックはそのときのティナを思い出す。
儚そうで、もろそうで、白い肌は確かにまるで生まれたばかりのようだった。あの頃の虚ろな瞳は、今はもうない。
「今でも誕生日になると不思議に思うの。幻獣と人の間の子が生まれた日……自分のことなのに、そんなものがあるなんて」
「関係ないさ。一年で一番素敵な日だ」
ロックの手がくしゃ、と柔らかいティナの髪をなでる。
「…ロックの手、好き。器用で、優しくて」
「俺はティナの全部が好きだよ」
布団の中で二人は微笑む。
明日も。
来年も、再来年も、ずっと一緒にいよう。
君がいるなら毎日が祝日だ。
誕生日おめでとう。
君がここにいる奇跡。
君がここにいるまでの軌跡。
蝋燭の火のような、繊細な命のまばゆさに涙が出そうなほど。