世界を白く塗りつぶさんとばかりに降り続く雪の中。
仲間たちはケフカを待ち構えている。その中で、彼女は血のように鮮やかに赤い存在だった。
一点の、赤。
しかしむき出しにされた肩は、血が通っていないのかと思うほど白い。
虚を見つめる青い瞳はどこか作り物めいている。
いや、瞳だけではなく、全体的に彼女はどこか人間離れした空気を持っていた。
不意に風が強くなって、彼女は白さにさらわれそうになる。
「ティナ!!」
見ていられなくなった青年は少女の名を呼び、肩をつかんだ。
「緊張してるのか?大丈夫、幻獣を帝国には渡すもんか」
「ロック…」
「それより寒くないか?いやそんなカッコじゃ寒いに決まってるよな。さっさと片付けてなんか温かいもん食おうな」
「ううん平気。それより…熱いの。何なのかしら。熱い…いえ、痛い?苦しいのかしら、もしかしたらやっぱり寒いような」
「!? 風邪をひいたのか!?」
「違うわ。そうじゃないの。熱くて痛いのは体じゃなくて…胸の中なの。なんだか変……もしかしてこれは感情なの?」
「ティナ…?」
「さっきロックがドアを開けて入ってきたとき、じわって熱くなったの。でもセリスをかばうロックを見たら冷たくなったの。……不思議な感じ。これは何?セリスもこうなったりするのかしら」
「ティナ、それは、」
また強く風が吹いた。
それから不吉な足音が響く。
「来るぞ!」
エドガーの声を合図に仲間たちが戦闘態勢に入った。
会話は否応なく中断される。
少女はまた白い世界に霞んでいった。
この後、彼女は暴走する。
それからしばらくは、彼女は心の中で迷い続けることになる。
真っ白だった心を、最初に彩った赤が恋だと知るのはまだまだ先のことだ。
あとがき
ナルシェ攻防戦の話です。
実際はこんな会話をする暇はなかったと思います(ぁ
ナルシェでロックとティナが再会するとき、ティナは彼の姿を見るや否や「ロック!」と叫んでいますよね。無事戻ってきて嬉しかったんだろうなぁ、とか、その時点でおそろく一番信頼していた人物が戻ってきたほっとしたんだろうなぁ、とか思います。
それからロックがセリスをかばったあとにティナがぽつりと言う「私も帝国の兵士でした…」が、何となく自己主張に思えてしまうのです。ロックの気を引くための。
さらにそのあとセリスに「人を愛することはできるの?」というのも、何となくセリスを意識してたってことなんではないかと、
勝手に解釈してます(コラ
そんなこんなでナルシェ攻防戦は結構思い入れが深いです。
本人に自覚はなかったにしても、例えそれがまだ恋というものでなかったとしても、自分にとっての全て(ティナにとってロックは親でもあったと思うんで)みたいな存在が、自分以外の人にエネルギーを注いでいるのを見るのはちょっと寂しかったんじゃないかと思います。
以上、長すぎるあとがき、もとい熱弁でした。