良かった、と思った。
姉にように慕った人と、心から愛した人が、美しい絆で確かに結ばれているところを、この目で見ることができたから。
あの人は今度こそ、ちゃんと守るべき人の手をつかむことができた。もう、亡くしたものを探して、悲しみ続けることはない。
どうか、幸せで。
光を目指してそれだけを想った。
その想いだけを残して、この痛みとともに自分は消えるはずだった。
決戦前夜。
ティナは一人で甲板に立った。
十分な高度を保つ飛空挺の上からでは、世界崩壊後も星を見ることができる。
(星を見るのは…多分これが最後ね)
星座を指でなぞった。あれがカシオペヤ座。あれが北斗七星。
そして北極星。
ロックが教えてくれた星。
道に迷っても方角を知ることができる、と。
「ティナ」
後ろから聞きなれた声がかかる。
ティナは苦笑しながらゆっくりと振り返った。
「全く…ロックは人の後ろをとるのが好きね」
「はは、驚いた顔を見るのが面白くて、つい、な」
「もう…。で、どうしたの?こんな時間に」
ティナの問いかけに、ロックの瞳は急に真剣になった。
「昼間セリスが言ってたことだけど……」
「ああ、三闘神のことね…」
「もしあの話が本当なら、ティナは…どうなってしまうんだ?」
「さあ…私にもわからないわ。…ただ」
「ただ?」
「私は守りたいものを守る。それだけよ。人を愛する気持ちを知って、大切な人がたくさんできたんだもの」
「ティナ…」
「さあ、もう寝なきゃ。明日は頑張りましょう」
「……ああ。おやすみ」
ティナは手を振りながら、ロックの瞳をまっすぐ見据えて微笑む。
こらえきれなかった涙のように、流れ星が一つ、流れて消えた。