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「光の中へ」 2

 良かった、と思った。
 姉にように慕った人と、心から愛した人が、美しい絆で確かに結ばれているところを、この目で見ることができたから。
 あの人は今度こそ、ちゃんと守るべき人の手をつかむことができた。もう、亡くしたものを探して、悲しみ続けることはない。

 どうか、幸せで。

 光を目指してそれだけを想った。
 その想いだけを残して、この痛みとともに自分は消えるはずだった。


 決戦前夜。

 ティナは一人で甲板に立った。
 十分な高度を保つ飛空挺の上からでは、世界崩壊後も星を見ることができる。
 (星を見るのは…多分これが最後ね)
 星座を指でなぞった。あれがカシオペヤ座。あれが北斗七星。
 そして北極星。
 ロックが教えてくれた星。
 道に迷っても方角を知ることができる、と。
 「ティナ」
 後ろから聞きなれた声がかかる。
 ティナは苦笑しながらゆっくりと振り返った。
 「全く…ロックは人の後ろをとるのが好きね」
 「はは、驚いた顔を見るのが面白くて、つい、な」
 「もう…。で、どうしたの?こんな時間に」
 ティナの問いかけに、ロックの瞳は急に真剣になった。
 「昼間セリスが言ってたことだけど……」
 「ああ、三闘神のことね…」
 「もしあの話が本当なら、ティナは…どうなってしまうんだ?」
 「さあ…私にもわからないわ。…ただ」
 「ただ?」
 「私は守りたいものを守る。それだけよ。人を愛する気持ちを知って、大切な人がたくさんできたんだもの」
 「ティナ…」
 「さあ、もう寝なきゃ。明日は頑張りましょう」
 「……ああ。おやすみ」
 ティナは手を振りながら、ロックの瞳をまっすぐ見据えて微笑む。
 こらえきれなかった涙のように、流れ星が一つ、流れて消えた。

Title
「光の中へ」 2
Posted
2006/11/11
Category
ロクティナ・長編::★「光の中へ」 ゆゐ

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