ざあざあと、そよぐ草原。
みどりの波は、高く低く。
*
自分の足で、大地を踏みしめて歩く旅。
それは、おぼろげな記憶の中でも恐らく、未経験。
私が帝国の外に出るときは、魔導アーマーでの行軍がほとんどで。
あるいは、軍用のチョコボに跨っての旅で。
もちろんそれは、『最強兵器』である私が、傷つかないようにとの配慮からで。
他に何の意図も、なかったろうけれど。
でも今は、何故か。
この感触を味わせるのを避けていたような、気さえするのだ。
下草は、さくさくと音を立てて。
土を踏みしめれば、ぎゅっと引き締まる感覚。
足の裏に当たるのは、小さな石や土の塊。砂に触れれば、さらさらと鳴り。
私というものが、確かにここに存在して。ここを歩いていることを、実感できる。
「ティナ、大丈夫か」
私の体力を案じてくれる仲間。
「もう少ししたら、休憩にちょうどいい場所があるわ。そこで昼食にしましょ」
「それがいいな。今日はずいぶん歩いたし、思ったよりも戦闘が多くなったしな」
言葉も意味も違うけれど。皆が私を案じて、守ってくれようとしている。
人の持つ優しい心が、じんわり伝わるから。
本当に嬉しいと、心の底から思える。
「ありがとう」
素直に言葉を口に出して、心に感じるままの表情を。
意識して、表情を作る必要などないと、教えてくれた人たちに。
今の私を、曝け出したとき。
皆は、笑った。
*
みどりの波は、低く高く。
あたたかいものを、運ぶ。
─────
感情を取り戻しつつあるティナの話。
昔書いて放置してあったのですが、せっかくなので晒し者に(オイ)