きっと、こんな感じ。
*
空が、とても綺麗だと思った。
あの戦いを経て、再び戻った青。
どこまでも、広がって。
どこまでも、見渡せる。
かつてはこの空を、飛んでいた。
飛空艇と。
自分の力と。
今あの大きな翼は、遠くにあって。
私が持っていた力は、なくなった。
それを寂しいと思う心が、ないわけではないけれど。
空を見上げることのできる自分が、確かに存在していること。
これは、嬉しいこと。
「……何を見てるんだ?」
耳に届いた声は、今も変わらずに優しくて。
振り向いた所には、今も変わらない笑顔。
この笑顔を今も見ていられる、それが嬉しい。
「空が綺麗なの」
「ああ、本当だ」
彼は私の隣に並んで、一緒に空を見上げた。
どこまでも青く、広がっている空は。
彼にぴったりの色だって、心から思う。
かつての戦いの中で、取り戻した青空の中。
ぼんやりと、溶けていった私の心。
青に溶け込んだ『私』を呼び戻してくれたのは、彼の声。
私の名前を、ひたすらに呼び続けて。
そして、『私』はここに残った。
空の中に溶けたのは、かつての力。
もう取り戻すことはできない、その力を失ったかわりに。
私が得ることができたのは、確かな記憶。
戦って、涙して、また立ち上がって。
最後に掴んだ、一番大切なもの。
今もそれは、私を包み込み、守っている。
「ロック」
「ん?」
「私ね、今も生きていることが嬉しい」
自分の顔が、自然と綻ぶ。
こんなことも、生きていなければなかったことで。
私は確かに、人として。
「生きていられるって……幸せ、なのね」
「ああ、そうだよ、ティナ」
私の言葉に、あなたはまた、笑った。
*
生きていられることが。
今の私の、幸せ。
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ロクティナ未来話を捏造してみました。
モブリズから青空を見上げて、のんびりと会話するなんて感じの…既に熟年夫婦のノリかもしれません(汗)