楽しい夢だけ、見ていたいから。
*
わかっては、いる。
どれ程に望んでも、君はもう、ここにはいない。
だって君は、あの場所で。
ずっと、俺を待ってるから。
探し続けて、手掛りすら見つけられずにいる秘宝。
言葉どおり、雲を掴むような話。
蘇りの力。
でも、どんな御伽噺でも、信じたくて。
俺は、今日も歩き出す。
「ロック」
緑の髪を、ふわりと風に遊ばせて。
魔導の少女と言われる彼女は、俺の元へと歩み寄る。
俺が笑みを浮かべると、彼女は訝しげに眉を顰め。
やがて、俺をじっと見据えたまま、口を開いた。
「……貴方は、不思議なひとね」
「何故?」
「本当は、何も楽しくなんてないのに、『笑って』いるわ」
人は『楽しい』と笑うものだと教わったのに、おかしい、と。
未だその知識は乏しいながら、本能的に察知したのか。
彼女の瞳は、清冽な泉のように。
清らかに、冷たく、俺を映した。
映し出された、男の笑顔は。
虚ろな瞳の、歪んだ笑顔。
*
開いていても、見えていない。
俺の瞳は。
心の中で、閉ざされたまま。
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……すみません、久々の投稿が病的なロックで。
物語前半の、ティナ覚醒・帰還後をイメージ。
レイチェルの事をずっと引きずりっ放しの、救いのない感じです。
つ、次はラブ度高めを目指し……たい、なあ……(弱気に)