何も、見えない。
＊
何故、今自分が目を覚ましたのかも、わからないまま。
私はじっと、窓の外を見つめていた。
厚い雲に覆われた世界には、星ひとつ瞬くことがなく。
ましてや、月明かりなど皆無で。
黒のような、濃紺のような、灰色のような。
深さも広さも何もわからない、どんよりと濁った世界が広がる。
「……眠れないの？」
不意に届いた声に、意識を向けた。
最近は、気配を感じることを怠っていたことに気付かされる。
ここは戦場ではないし、帝国でもないのだから。
そう、自分に言い聞かせてきた成果の、ひとつといえば、そうなのかもしれない。
……これが、自分の中での『油断』に繋がらないよう祈りたい。
「ロック」
「ごめんな、驚かせたか」
人好きするであろう柔和な表情を浮かべ、明るさを落としたランプを手にして。
彼はゆったりと私の元へ歩み寄り、窓の外に視線を向ける。
そして、目を細めた。
「こりゃ、明日の朝までに止まないかもな……」
厳しい口調と、歪んだ口元。
仄かな明かりに照らされていたのは、僅かな輪郭でしかなくて。
青灰色の瞳の奥は、見えるはずもない。
もしかしたら、この空よりも、濁った瞳。
「……ロック」
「ん？」
答える彼の表情は、既に快活な、普段良く見せるものに変化していて。
どこか、もやもやとした感情を覚えた。
「この空は、どうやったら晴れるのかしら」
「へ？」
「……この色は、嫌い」
＊
貴方の瞳は。
どこまでも、濁っていて。
何故か、嫌い。
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６月らしく『雨』をテーマに捻ってみた…ら何故か暗い文章に（汗）
おかしいな。甘いロクティナを書こうとしていた自分は何処に？