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「消える前に」(ティナ) チョコ

※ゲームと違う箇所があります。苦手な方は、ごめんなさい。。

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「ん・・」

隣で彼が、身じろぎする。
起こしてしまったかしら?と心配したけれど、

「・・すー、すー・・」

どうやら大丈夫らしい。
にっこりして、ティナはそっとベッドから抜け出した。
近くにあった椅子を引き寄せて腰かけ、じっとロックの顔を見つめる。

サラサラ流れる髪。
無邪気な、少年のような寝顔。

「・・・大好き。」

独り言のようにつぶやいて、思わず知れず、ティナは真っ赤になった。

───決戦前夜。

明日への不安が大きくて、隠すことが出来なくて、愛しい彼の優しさに甘えた。
彼は何も言わずに引き寄せて、ただ私を抱きしめてくれた。

─私が眠れるように。
─私が怖くないように。

「ありがとう。」

そう言った瞳から涙がこぼれる。

ありがとう。
ありがとう。
大好きだよ。

彼の笑った顔も、
彼の怒った顔も、
彼の寂しそうな顔も、
彼の悲しそうな顔も、
一つ一つを宝物のように思い出して、泣いて泣いて泣いた。

私は本当に愛していた。
彼を彩る全てのものを。


「──レイチェル、さん。」

理由はわからないけれど、ふいに言葉に出てきてしまった。

彼の永遠の想い人。
彼の全てだった人。
どうして・・・?

「ああ、そうか・・」
突然答えがひらめいて、私はまた涙を流す。

「レイチェルさん、ごめんなさい。」

私はずっと、あなたに嫉妬していました。
ずっとずっと、苦しいくらいに。
だって、彼の中にはいつもあなたがいたから。
彼の中のあなたは、どうやっても消すことが出来なかったから。

だけど。

「レイチェルさん、ごめんなさい。」

また、私は謝罪を繰り返す。

─どんなに辛かっただろう。
─どんなに切なかっただろう。

運命によって愛しい人と引き裂かれ、思いが通じた時には自分はこの世にはいないのだと悟った時。

「レイチェルさん、ごめんなさい。」
泣き声をたてたくなくて、私は手で顔を覆う。

私は、あなたの心を少しも考えたことがありませんでした。
少しも、思いやったことがありませんでした。

「なんて愚かだったんだろう・・。」
自分自身の身勝手さに腹が立つ。

でも今なら。
今なら、あなたの心がわかる気がする。
あなたに、近づける気がするの。

あなたが彼に言った最後の言葉。

あなたは未来を生きて───


私は、ロックに向かってそっとつぶやく。

「あなたは、未来を生きて。」

私は消えてしまうかもしれないけれど、どうか諦めないで。
信じることを、やめないで。
─愛することを、やめないで。

「レイチェルさん・・」

また、私は彼女の名前を呼ぶ。
低く小さくつぶやくように。

「私はあなたほど、立派な人にはなれそうもないわ・・。」

自嘲にも似た思いで、私は少し苦笑いした。

彼の瞳に他の人が映るなんて。
あの優しい眼差しが、他の人に向かうなんて。

「そんな事、耐えられない・・っ」

涙はひまなく瞳から溢れて、もうどうすることもできない。


愛しい、愛しい、愛しいロック。

ねえ、あなただけなんだよ?
こんなに私を揺るがすことが出来るのは。

あなただけなんだよ?
私をこの世にこんなに執着させるのは。

「全部、全部、あなたなのに・・」

苦しい。
くやしい。
悲しい。

「どうして・・・?」


───外は、雨。
さあさあと降り注ぐ滴は私の涙に似て、やむことはない。


私も、消える前なら言えるかしら?
大好きなあなたが未来へ進める言葉を。

あなたの笑顔が続くように・・・


<あとがき>

懲りずに、またしても投稿させて頂きました。(しかも続いてる。。)場面は決戦前夜です。
ティナが「自分は消えるかも」と恐怖を抱いたとき、ずっと心の底で引っかかっていたレイチェルさんが、もしかしたら出てきたかもしれないな、と思って書きました。(相変わらず文章はイタタタタ・・ですけど。。ほんとにすみません。長いし。)
読んでくださって、ありがとうございました!!

Title
「消える前に」(ティナ) チョコ
Posted
2007/06/22
Category
ロクティナ・SS

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